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日本の財政赤字はひとり当たり1032万円

過去30年間、日本経済の潜在的な不安は、財政赤字問題だった。その財政赤字は累増して、日本の巨大な政府債務残高をつくってきた。その残高は、1287兆円(2022年12月末、国債+借入金+政府保証債)。これは、経済規模(=名目GDP)の2・31倍である。総人口で割ると、国民ひとり当たり1032万円という途方もない数字になる。

日本の財政は、借金大国、赤字たれ流し、など様々な悪いイメージで語られている。反面、「それがどうした?」という人も大勢増えている。狼少年のように、「危機が来ると叫んでも危機は来なかったではないか。これからも来ない」と主張する。「危機なのか?」「危機は虚構なのか?」という素朴な疑問が国民を混乱させる。まず、その辺りから整理しておこう。

「日本に国家破綻はない」は本当か? 国家破綻が毎回、「今回は違います」と言われてやってくる理由_1
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事実として、国家は破綻することがある。2022年だけを見ても、世界中でいくつかの国が破綻した。ガーナ、マリ、レバノン、スリランカは、国債などの政府債務の支払いが停止されて、デフォルト(破綻)と認定された。中南米のエルサルバドルも破綻寸前とされる。世界中のどこかで財政が行き詰まる国家が現れている。

2008年に刊行された書籍に、国家破綻の研究をした『国家は破綻する─金融危機の800年』(日経BP社〈訳書は2011年刊行〉、カーメン・M・ラインハート、ケネス・S・ロゴフ)の著作がある。この巻末には、世界各国の国家破綻、債務危機、金融危機の事例が山のように掲載されている。2022年の海外の破綻事例は、そうした氷山の一角に過ぎない。

この本がふるっているのは、原題が「This time is different」(今回は違う)となっていることだ。国家破綻とは、毎回、「今回は違います」と言われてやってくるのだ。これは、バブル発生時の社会心理とも共通すると言える。かつて、筆者も何度も「今回はバブルとは違います」という言葉を聞かされた。だから、ロゴフたちの著作のことを知ったときは膝を叩いて、その通りだと思った。