蚊が大量発生する条件は?
国内ではすでに全国30都府県に「カメムシ注意報」が発令され、今夏のアメリカでは羽化のめぐりあわせで1兆匹のセミが現れると予想されるなど、人間社会を脅かすほど大量発生する昆虫のニュースが後を絶たない。
一方、日本の夏の風物詩ともいえる「蚊」。その発生状況も日本人なら気になるところだろう。蚊の活動期間は4月から11月で、ピークは7~9月とされる。SNSの投稿を覗いてみると蚊の被害に遭う人がすでにかなりの数いるようで……。
果たして今年の真夏はどれだけ蚊が発生するのか。日本ペストコントロール協会技術委員長の谷川力氏は「今年はまだどうなるかわからない」と前置きしつつも、蚊の発生条件についてこう解説する。
「ポイントのひとつがこれから訪れる梅雨の降水量。降雨が長引くと蚊の幼虫であるボウフラが成長する水たまりが増え、蚊の大量発生につながります。
東南アジアなどの熱帯地域には雨季と乾季があり、雨季によってボウフラが大量に育っている。日本の気候がそういう地域に近づけば、同じように蚊が大量発生する可能性があると思います」
谷川氏によると、国内には、ヤブや草むらに潜み、白黒ボディが特徴のヒトスジシマカなどが属する「ヤブカ類」と、家で就寝中に耳元で「プ~ン」と羽音を立てるアカイエカなどが属する「イエカ類」という2種類の蚊が主に生息しているという。
「そして、人間の血を吸う蚊はメスのみです。オスは花の蜜や樹液などを吸うので人間に害はないのですが、メスは産卵に必要な栄養を摂取する必要があるため、人間を始めとした哺乳類や鳥類などの血を求めます。7~9月が増殖期にあたるため、この時期に蚊に刺される被害が多いというわけです」(同)
蚊が活発に活動できる気温は22~30度。ところが、昨年は7月から8月にかけて気温35度を超える日が続出。あまりの猛暑に蚊の増殖期がずれ込んだのだとか。
「人間は暑ければ汗をかくなどして体温調整ができますが、蚊はそれが難しい。だから昨年は真夏を避けるように、6月と9~11月の2度、増殖期がやってきて、この時期に多くの人の血を吸いました。
一方で、猛暑になるとその日光でボウフラの生育地の水たまりが蒸発してしまうため、蚊の発生数が減ると一般的に考えられています。降水量の多さと酷暑すぎない気温、この2つが蚊の大量発生の条件というわけです」(同)