記録の捏造や水増しも…不正請求のカラクリ

ところが、筆者が入手した乾さんと同社スタッフの会話を録音した音声データには、こんなやり取りが残されていたのだ。

乾さん「(社長から)前みたいにサインと印鑑押してくれっていわれたんや。(略)で、助成金欲しいんやったら前と同じように、ここに印鑑とサインは、もう向こうにおる人が書いてくれて」
 
──(就労に)行ってはいないってこと?

乾さん「もう(代表)にも言うてるんよ。もう行かへんからねって」

実際には就労していないにもかかわらず、サインと印鑑のみで給付を得ているのだ。それだけではない。乾さんは同社から訪問介護サービスも受けており、ここでも不正が行われていると、B社関係者は証言する。

「利用者さんの自宅を訪問して、どんな介護サービスを行ったか『訪問記録』をつけることになっていますが、乾さんが病院に行っている日に、本人が自宅で介護サービスを受けたことになっていた。一緒にドン・キホーテに買い物に行ったと、ウソの訪問記録を作成していたこともあります。買い物に同行すれば給付金が多くもらえるからです。会社は提供していないサービスを実施したことにして、介護報酬を不正に受給しているのです」

就労を支援した、自宅で介護した、買い物に同行した、などと様々な書類を整えて大阪市から金を引っ張る。まさに同社にとって乾さんは「金のなる木」だ。

また、ある現職のスタッフは、乾さんの他にもほとんど姿を見たことがない人物が、作業所で就労したことになっていると明かした。

「その人の就労実態を示すはずの『就労継続支援提供実績記録票』を見ると、土日を除いたほぼ毎日、午前10時から15時40分まで作業をしている月がある。しかし、作業所で彼をみたことはほとんどありません」

実態のない「就労支援」で月26万円を不正受給、「移動支援」の中身は“たこ焼きパーティー”…なぜ介護業界で不正がまかり通るのか?_2

不可解な請求は、まだある。2022年10月15日、同社の介護スタッフと障害者6名が、福祉車両のワンボックスカーに乗って会社から20分ほどの寂れた喫茶店を訪れた。

カウンター6席にテーブル席が2つの小さな店内。この店で、利用者から各2,000円を徴収して〝たこ焼きパーティー〟が開かれていた。

B社のスタッフが話す。

「これは『移動支援』といって、障害者の移動を支援したという名目で、大阪市から会社に給付金が入ります。約3時間の会でしたが、スタッフは時間を水増しして、市から給付金を多めに受け取っていた。1人数万円ほどの微々たる額ですが、公金を不正に得ていることに変わりはない。生活保護の方から参加費を取り、不味(まず)いたこ焼きを食べさせて、挙句の果てには店で嘔吐してしまった利用者もいた。同行したスタッフの一人が、『こんな所で何しとんねん!』と声を張り上げたと聞きます。これのどこが障害者福祉なのでしょうか」

確かに、同社の勤務シフト表を見ると、同行していないスタッフまでが3時間以上、移動支援を行ったように記されている。