宮沢りえの首を強く締めすぎたら……
――そもそも高知さんは、芸能プロダクションの社長などを経て、芸能界へ入ったわけですが、演技の勉強というのは?
最初にお世話になった事務所がフロム・ファーストプロダクションというところで、モッくん(本木雅弘)をはじめ、竹中直人さん、石野真子さん、今は独立した北村一輝、ほかにも錚々たる俳優を抱える会社だった。そこで俺も芝居の稽古してもらえるのかと思っていたら、当時の社長が「する必要ない」って。でもあの頃の俺は、演技の経験はゼロ、標準語もまともにしゃべれない、漢字も読めない。それでいきなり現場に行ったもんだから、大変なんてもんじゃない。NG出しまくり。しかもデビュー作なのに、ゴールデンタイムのドラマだったからね。
――1993年に日本テレビで放送された『西遊記』ですね。
そうそう。日テレ開局40周年記念の特別ドラマ。モッくんが孫悟空、宮沢りえちゃんが三蔵法師の役で。俺は銀角大王っていう悪役だったんだけど、演技はもちろん、スタッフがしゃべっている専門用語はわからないし、とにかく大変だった。監督が「わらえ」って言ってるから、竹中直人さんと同じ事務所の人間としては、あの有名な「笑いながら怒る人」をやれってことだなと思って、ヘラヘラ笑いながら長台詞を言ったら、「ばかやろー!」って缶コーヒーが飛んできた。「わらう」って業界用語で「片づけろ」って意味なんだよね。
ほかにも、俺が三蔵法師役の宮沢りえちゃんの首を絞めるシーンでは、なにしろ加減がわからないもんだから、ギューって強く締めすぎちゃって、りえちゃんが「く、苦しい……」って。すかさずマネージャーのりえママがすっ飛んできて、怒られたね。
――芸能界に入る前、高知さんはどういう映画を観ていたんですか?
俺は家庭環境のせいで、映画は任侠ものだけ。とくに好きだったのが金子正次さんの作品で、名作『竜二』にはじまり、陣内孝則さん主演の『ちょうちん』、哀川翔さんと的場浩司さんダブル主演の『獅子王たちの夏』とか。映画の中で陣内さんが、警察に手錠をかけられてニタ〜ッと笑うシーンがカッコよくてね。俺もいつかああいう役やってみたいなぁと思ってたら、25年後に本物の手錠かけられちゃったよ。