部活動の強制加入

ルールで児童生徒の行動をがんじがらめにしているのは、校則だけではない。その一つが、部活動である。2017年度にスポーツ庁が実施した運動部活動等に関する実態調査によると、公立中学校の30.4%、公立高校の15%が部活動は「全員が所属し、活動も原則参加する」、実質的に強制加入の状態となっている。

しかし本来、学習指導要領によれば、部活動は「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」とされており、制度上は「参加は任意」となっている。また2018年3月にスポーツ庁、12月に文化庁がそれぞれ運動部・文化部の「活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定し、部活動への参加を強制しないよう留意しなければならないことを、本文、Q&Aで明記している。

にもかかわらず、いまだに部活動強制加入が続いている。岩手県内の中学校では、2020年度、任意加入は150校中60校で、6割の学校が「強制加入」となっている。

では政府がガイドラインを作っているにもかかわらず、なぜ部活動の強制加入は続いているのか。その理由としては、大きく7つ挙げられる。教員へのアンケートサイトである「フキダシ」で、部活動の必須加入に関するアンケートも実施したため、その回答結果も参考にしながら、背景を整理していきたい。

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① 歴史的背景
今では、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」とされる部活動だが、20年ほど前まではクラブ活動が全員必修であった。

平成元年(1989年)の学習指導要領改訂までは、特別活動として週1回行う「クラブ活動」が必修で位置付けられており、同年の改訂で、中学・高校ともに、教育課程外活動の部活動をもって代替できることになった(「部活動代替措置」)。結果的に、全員が部活動に参加する流れになっていったが、その後、中学校では平成10年(1998年)、高校では平成11年(1999年)改訂の学習指導要領で必修のクラブ活動は廃止され、部活動は任意参加の、課外活動の一環として行われるようになった。

しかし、これまで全員参加になっていたため、そのまま依然として残っている。また、1980年代頃までは、今より学校が荒れていたため、放課後自由にさせない、部活を通して指導する、という成功体験を、まさに今の校長世代が経験していることも大きい。

さらに、名古屋大学・内田良教授らの調査によると、部活動が教育課程外であると正しく認識できている現役教員は56%程度しかいないという結果になっており、そもそもあくまで「任意参加」のものであると認識されていない。