トクリュウだの中国マフィアだのは、かすりもしない話だった

当の捜査関係者も「情報収集という点では、上野を縄張りにする組や外国人グループの事件当時の動向を確認するのは当然だ。今回も初期にはそのあたりは当然つぶしている」と話す。

ただ、現場で関係者や住民に直接取材を繰り返していたメディアは、警視庁がライバル店関係者から話を聞き、さらに当日のアリバイやカネの流れを確認し、トクリュウや中国マフィアの犯行の可能性は薄いと早々に判断したことを感じていた。

佐々木容疑者(知人提供)
佐々木容疑者(知人提供)

「ゴールデンウィーク前には警視庁はライバル店関係はほぼ洗い出し、宝島さんと周辺者の関係や行動をライバル店側にも詳しく聞いていた。その上でトラブルの現場でたびたび中心になっていた関根容疑者については特に関心を持って聞いていたようです」(警視庁担当記者)

長年“現場”にこだわるベテラン雑誌記者もこう話す。

「合同捜査本部は平山の交遊関係を洗い、“アニキ”が福岡県出身の佐々木光容疑者(28)であることをつかみ、4月28日に那覇空港で逮捕しました。警視庁は佐々木が、関根が事実上経営するサンエイ系列の焼肉店のすぐそばのガールズバーでキャッチをしていたことや、サンエイ内部で宝島さん夫妻と関根との間で経営の主導権争いがあったことをつかんでおり、佐々木の自供を待たなくても、この時点で関根が捜査線上に浮上していた可能性は高いとみていました」

関根容疑者(知人提供)
関根容疑者(知人提供)

警視庁は4月下旬には24時間態勢での関根容疑者の行動確認に入っていた。そして逮捕令状と家宅捜索令状の発付を得て、5月6日深夜に関根容疑者に対する強制捜査に踏み切った。
経営の分け前をめぐり不満を募らせた“番頭”が、社長夫妻を亡き者にして会社を乗っ取ることを画策し、知り合いにカネで殺害と遺体遺棄を請け負わせようとしたのが事件の構図とみられ、トクリュウだの中国マフィアだのといった要素はかすりもしない話だった。