「(店を)取られるくらいなら、こっちから取ってやるか」
警視庁と栃木県警の合同捜査本部も関根容疑者がY氏に話を持ちかけたとの情報を把握しており、全容解明のためY氏から事情を聴く方針とみられる。
宝島さんのサンエイ商事は上野で飲食店を20店舗近く集中展開しているが、うち5店舗ほどは関根容疑者が事実上、運営していた。全身に刺青を彫っていた関根容疑者には「商売の才覚があった」と話す関係者もおり、運営する店の売り上げが好調なことを快く思わない宝島さんが「おれの会社だからもっと(売り上げを)よこせ」と主張し、これに反発した関根容疑者が「(店を)取られるくらいなら、こっちから取ってやるか」と口にするなど、経営の主導権をめぐる内紛が起きていた。警察は関根容疑者は宝島さんから事業を奪う目的で殺害を計画した可能性があるとみている。
事件では夫妻の遺体が見つかった翌日の4月17日に平山綾拳容疑者(25)=埼玉県越谷市=が警察に出頭し「アニキの求めで遺体を処理する実行犯として飲み仲間2人を紹介し、粘着テープなど凶器を購入したうえで車を飲み仲間に渡した」と供述した。この「アニキ」は2月上旬から上野で客引きをしていた佐々木容疑者とわかり、捜査本部は沖縄県で同容疑者を4月28日に逮捕、複数のスマートフォンを押収している。
また、平山容疑者が車を貸し、遺体を那須まで運んだとみられる元俳優の若山耀人容疑者(20)と姜光紀容疑者(20)や、4月15日夜に宝島夫妻を誘い出したとみられる不動産会社代表の前田亮容疑者(36)も逮捕した。指示役の佐々木容疑者は平山容疑者に約1500万円を「報酬」として渡し、平山容疑者は実行役の2人に250万円ずつ配って、残りを自分のものにしていた疑いがある。
捜査本部は、関根容疑者が佐々木容疑者に車や凶器の準備だけでなく、遺体を遺棄するなどの「実行部隊」を用意するよう求め、応じた佐々木容疑者からさらに発注を受けた平山容疑者が若山、姜両容疑者を引き入れたとみている。