「女性にはお金を渡したあと、一方的に冷たくされたみたいで…」
和久井容疑者は川崎市川崎区生まれ。両親と3人、古い木造2階建ての家で暮らしていた。自宅を訪ねると父親は肩を落とし、重い口を開いた。
「事件が起こる前日、学はふだんどおり、昼ごろに『仕事行ってくるわ〜』と告げて出ていったよ。あいつは運送関係の仕事をずっとしてて、会社に属したり委託でやったりしてるからね。だからべつに違和感もなかったし、いつも通り見送ったの。
それで翌日の朝にテレビをつけたら、『和久井学容疑者』なんて映ってるもんだから『まさかな...』と思ってたら、こんなことになっていて…。もちろんショックだし、今朝からイタズラ電話もかかってきてて、電話に出たら『おい、人殺し!』なんて罵声を浴びせられるもんだから参ってる。
もちろん学がやったことは許されることではない、わかっているけどアイツも思うところがあったんじゃないのかなって...」
――被害者のAさんとはどういう経緯で出会った?
「3〜4年前くらいかな? ある日突然、『今年の秋に家を出るから』と言い出したから『どうして?』と聞くと『オレ、結婚するから』って言ったんだよ。それで詳しく聞いてみると、どうやら相手の女性に『本気で結婚するなら車とかバイクを処分してお金にしてくれ』と言われたそうで、『なんだそれ?』と聞いていて違和感はあったよね。
だっておかしいでしょ? 結婚するためにお金を持ってこさせるなんて普通じゃないし、学はAさんを一度もウチに連れてきたこともなかったから『やめといたほうがいいよ』と反対したんだ。でも『Aは可愛くて素直でいい子なんだよ』と聞く耳持たずって感じで。
それで学は20年くらい乗っていたホンダの『NSX』って車と『NR』ってオートバイを売って1000万円をつくってAさんに渡したみたいなんだ。でもその年の終わりごろに『Aとケンカした』って言い出したの。どうやら結婚はダメになったらしいんだわ。
その女性にはお金を渡したあと、一方的に冷たくされたみたいで、それで学も『だったらお金を返してくれ』とお願いしたんだけど、まったく相手にされなくて揉めるようになった。
そのうちに警察に通報されて、学は逮捕されたってわけ。でも、そのころには学は『オレは詐欺罪でAを訴える』とも言っていたよ。そうした言い分も、警察はまったく聞いてくれなくて『警察が全然動いてくれない...』と不満をこぼしていた」