五味一男が考えていたダウンタウン番組案
多忙を極めていた私に余裕がないため実現することはありませんでしたが、もしもダウンタウンと一緒に仕事ができるなら、どんなコンセプトがよいか……を岡本さんとのお話のあと、妄想のように思い浮かべていました。
その概略は、全国から面白い話を募集し、そのなかからとくに面白いと思った話を選別し、そのエピソードを芸人がしゃべるというもの。ラジオの深夜放送にリスナーから送られて来た爆笑エピソードを漫画チックに可視化するイメージです。そのMCをダウンタウンがしたら面白くなるんじゃないのかと空想しました。
そうです。私が考えていた企画は『人志松本のすべらない話』に少し近いコンセプトで、『投稿!特ホウ王国』+『テレビ三面記事 ウィークエンダー』(日本テレビ。全国ニュースで伝えられることが少ないB級事件を、リポーターがフリップボードを使って解説する番組)のような番組だったんです。
『マジカル頭脳パワー!!』が終了すると1999年から後番組として、私は『週刊ストーリーランド』という番組をスタートさせます。実はこの番組こそ、そのアイデアから派生したものでした。「全国から集められたノンフィクションの爆笑話」を「全国から集められたフィクションの面白話」に変えたんです。
『明石家サンタ史上最大のクリスマスプレゼントショー』(フジテレビ)は、笑えるエピソードなのに、話者である素人さんの間が悪いため、面白さが半減してしまうケースが珍しくありません。私はその頃、珠玉の面白いエピソードを腕のある芸人さんにしゃべらせたら、どれだけ笑えるのかを見てみたかったんだと思います。
さらに、天才的なひらめきを持つ松本さんが舵を取っていたら、きっと面白くなっていたのかもしれない。今となっては、そんな妄想を懐かしく感じます。ただ、私は映画監督タイプなので自分の言うことを聞いてくれる人ではないとうまくタッグを組めない。自身も監督気質である松本さんとうまくできたかどうかはわかりません。
ただ、後年、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ)の放送が始まったとき、私は「やられた!」という思いと「やっぱり松ちゃんってすごいな!」という相反する感情を抱きました。『人志松本のすべらない話』は、土曜21時から放送されていたため、奇しくも数年前から放送していた『エンタの神様』の裏番組になってしまいました。流派はまったく違う。だけど、私は『人志松本のすべらない話』をとても面白いと雑誌などで公言していました。
松ちゃんも『エンタの神様』を意識していてくれたという話を間接的に耳にすることもありました。もしそれが事実ならば私はとてもうれしく感じます。そして、今後どこかで御一緒する機会があったら、仲良くではなく喧嘩しながらでもいいので(笑)、画期的なコンテンツをつくれたらいいな……と密かに期待しています。
文/五味一男