ヒエラルキー最下層という扱いに不満も
一方で働く側には普通のバイトよりも不利だと感じられることもあるという。
「バイト代ですね。アプリに出てくる仕事の多くは安く、最低賃金(東京都なら時給1113円)の仕事も少なくない。東京23区内ならコンビニや飲食店のバイトは人手不足で時給1300円台のものも珍しくないことを考えれば、ここのはかなり安い。それに交通費も上限500円程度のものがほとんどで、まったく出ない仕事もありますね」(40代女性)
A社のサービスを利用し求人をアプリに掲載している企業は、バイトに支払う報酬額の30%を「利用料」としてA社に支払い、バイトに払う交通費も利用料の適用対象に含まれる。このあたりも賃金の安さの背景にあるようだ。
「企業側からすれば、実際に働いた人に支払う額の1.3倍以上の人件費がかかることになるので、基本になるバイト代を低く抑えたいんでしょうね。自社で募集しても集まらない人手を確保するためA社に求人を掲載してもらうので仕方ない面もありますが……」(50代男性)
埼玉県在住で週に数日、スキマバイトで都内の会社に勤めているという50代の女性は求人の地域差についてこう指摘する。
「スキマバイトの求人を出す会社は都内から外れると急に少なくなる印象です。だからA社を利用して副業でバイトをするときも都内で探すことがほとんどです。でも交通費が出ないところが多いので、ふだん通勤で使ってる定期券の範囲で探しています」
4月上旬、スキマバイトで流通倉庫のピッキング(荷出し)に入った人物がネット上で公開したエッセイが話題になった。
初めて入った倉庫で社員に言われたとおりに荷物をハンドフォークに積み上げた筆者は、パート女性から「無茶苦茶な積み方をしてるね」とこき下ろされ、次の工程の人が作業しやすいように荷物を積み直した。
社員の指示に基づいて積まれた荷物を見て「教えた人が悪い」と言ってのけたパート女性から筆者は、荷積みの方法ひとつとっても繰り広げられている正社員とパートの主導権争いの中で、自分たちスキマバイトは双方から代理戦争のコマにされている現実を悟り、疲労感に包まれる、という内容だ。
スキマバイトのワーカーは初めての作業で不慣れな面が多いことも災いし、経営者や社員、パート、バイトなどで構成される仕事場のヒエラルキーで、非正規の中でもかなり下位に置かれていることをうかがわせる証言はほかにもある。