「グンゼの技術は確立されており、われわれも引き継げると思った」

その後、慶応大を卒業した小林社長はまず、ライバルメーカーの花王の販売会社へ入り、営業を修業。4年間勤めた後に退社し、小林製薬に入ると、米国のミシガン州立大経営大学院に留学し、帰国後には製造部門も経験するなどして社内事情の掌握を進め、2013年に社長に就任した。

産経新聞などによると、小林製薬内では創業家の小林一族の歴代社長を名前のイニシャルで呼ぶ文化があり、一雅氏は「Kさん」、小林社長は「Aさん」と呼ばれたという。

「もう慣れましたが、入社した頃は違和感があって嫌で…。けれどこういうところも小林製薬らしさなのかもしれません」と小林社長は語っている。

会見を終えた小林社長(撮影/共同通信社)
会見を終えた小林社長(撮影/共同通信社)

アイデアマンの父、一雅氏が薬の卸売業からメーカーに転換させたと言われる会社を継いだ小林社長は、経営トップになる日に備え、学生時代からひらめいたアイデアを都度、書き留める習慣をつけていたという。テレビCMなどで定番となっている「あっ! 小林製薬」というキャッチコピーも小林社長自らが考えたフレーズだ。

クリエイティブな発想を自らにも課した小林社長が就任した後に、会社は今回問題となった紅麹事業に乗り出した。

「小林製薬の紅麹事業は2016年にグンゼから譲渡を受けて始まっています。3月29日の記者会見では、『グンゼから引き継ぐまでは紅麹の知識はなかったのか』と事業に乗り出したことを問題視するかのような質問も出ました。

これには同席した品質管理部門幹部が『グンゼの技術は確立されており、われわれも引き継げると思った』と答え、小林社長自身も『製造に関係する(グンゼの)技術者にも(事業と一緒に)入社してもらい、大丈夫だと思っていた』と答えていました。

紅麹自体には毒性はなく、今回の問題は製造過程での異物混入が原因とみられるため、事業を行ったことの是非ではなく製造過程の衛生管理がどうだったか、が問われることになります」(経済部記者)

小林製薬(撮影/集英社オンライン)
小林製薬(撮影/集英社オンライン)