「確かに安くはないけれど、その金額に納得はできる」
この連載を始める前、担当編集との雑談から「薄毛をテーマにした漫画はどうか?」という話になったとき、まず僕がお願いしたのがAGAクリニックの取材だった。
その段階では、自分の薄毛問題が解決するまでのアレコレをルポ漫画風に描くことにして、あわよくば取材費として編集部のお金でAGAクリニックに通院させてもらおうという下心があったのだ。
安易な思いつきは早々に却下となったが、クリニックへの取材はOKが出た。薄毛漫画を描くなら避けては通れないところだし、仮に自費で治療を始めるにしても、まずAGAクリニックがいかなる場所か知っておきたかったのでありがたかった。
取材させていただいたのはテレビCMなどでもよく名前を耳にする某大手クリニック。編集者さん同行のもと、通常行われている無料カウンセリングを受けながら、AGA治療の基本的なお話から個人的な疑問までいろいろなお話をうかがった。
気になっていたことのひとつが料金の問題。
以前も書いたが、男性はある時期から薄毛治療のネット広告に狙い撃ちされる。そこでよく言われているのが「大手AGAクリニックの料金はどこも高すぎる!」という内容だ。しかし実際にカウンセリングを受け、治療の内容や薬の説明を聞いてみたところ、「確かに安くはないけれど、その金額に納得はできる」というのが正直な感想だった。
そもそも僕がわかっていなかったのは、治療にかかる費用に幅があるということ。考えてみれば当然だけど、各人の薄毛の状況によって治療の内容も使用する薬も違う。薄毛初期の段階で治療を始めれば、思ったほどの費用はかからないようだ。
一番強力なコースの費用は確かにそれなりだけど、元来AGA治療は長く付き合っていくもの。どんな薬にも副作用があるし、年齢・体調・人生のさまざまなタイミングにおいて薬を切り替えたり治療を止めたりすることもあるだろう。それを考えれば丁寧なカウンセリングや定期的な経過観察、対面で相談できる医師の存在はありがたい。そのためにクリニックがあり、腰を据えて薄毛治療に向き合う人にとって、安心・安全にお金を払うのは妥当なことなのだろう。
AGAクリニックを取材してわかったのは、「安心・安全が有料なのは世の習い」ということだった。
残念なのは近ごろソレがなかなかの高級品になってしまっている我が身のほうで、せめてこの漫画の人気が出てくれることを願うばかりだ。
文/トリバタケハルノブ