――山本さんを誘った理由は?
森 「Google Play Indie Games Festival」の取り組みの課題感をずっと持っていました。どんな取り組みであればゲームクリエイターさんの助けになれるのか、どういった形であれば集英社のゲーム事業につながるのかを「集英社DeNA プロジェクツ」(集英社とDeNAの合弁会社)との定例会で同社の小島さんという方と相談していて、「ゲームクリエイターズCAMP」の企画の前身のアイデアが生まれました。その企画をブラッシュアップしていく過程で小島さんから山本さんをご紹介いただきました。
山本さんは過去にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)社でゲームクリエイターさんを発掘し、一緒にゲームを制作する「ゲームやろうぜ!2006」と「PlayStation C.A.M.P!」のリーダーを務めていました。本プログラムから生まれたゲームは何本も高い評価受けていて、私も当時ファンの作品もあって。まさに僕たちがやろうとしている事業と同じような取り組みで、小島さんの推薦ということもあってお会いしました。
山本 僕と小島くんはSCE時代は同僚で、SIEになってからは上司と部下の関係として、「PlayStation C.A.M.P!」で一緒に働いていました。小島くんからは「キャンプ」の名のついた同じようなサービスを立ち上げたいので、許諾の意味も込めて一度会ってほしいと言われました。
「PlayStation C.A.M.P!」はだいぶ前に終了しているし、僕が許諾できる立場でもないんだけど……。律儀な人だな、と思いながら当時渋谷でお酒を飲んでお話ししました(笑)。
――その話をされた当時、山本さんはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)に勤めていましたか?
山本 はい。ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)も含めると四半世紀もソニーグループでゲームを作ってきて、もうそろそろ卒業しようと考えていたころでした。そこにちょうど「集英社ゲームクリエイターズCAMP」の話がやってきて、アドバイザリーの立場でお引き受けし、1年後に集英社ゲームズが立ち上がるとなった際に、参画依頼をされた形です。
――小島さんがつないだ縁もあり、集英社ゲームズとしてスタートを切りやすい状況が整ったのですね。
森 はい、山本さんほどのプロの方々が集英社の新規事業にコミットしてくれるのであれば、本当にこの事業の成功の可能性が出てきたぞと。集英社は漫画家さんの才能に投資する会社であり、ゲーム事業でもゲームクリエイターさんの才能に投資するビジネスモデルにするのは事業モデルとしての筋が通っています。そのため、経営陣にも理解されやすかったです。
山本さんや小島さんなど良いプロデューサー人材に恵まれたうえに、集英社ゲームクリエイターズCAMPの業界からの大きな反響が味方してくれました。集英社は幸いにもここしばらく業績が良く、新しい事業に投資できる余力もあります。ゲームは作るだけで1、2年はかかりますし、才能を発掘するプロセスまで含めると最低でも4、5年かかる覚悟が必要でした。ただ、「才能に投資をする価値」はもはや出版社の経営層に説明が不要であるくらいの共通認識でしたし、新規事業でゲーム事業で中長期にわたる投資を行いたいという理解もしてもらえ、投資対象としていただけました。そうして承認も下り、集英社ゲームズが誕生しました。
――ゲーム事業を集英社の一部門とせず、法人化したのはなぜですか。
森 シンプルにいうと機動力です。加えて、ゲーム事業のブランディングの一環としてお考えいただければわかりやすいと思います。弊社が出版社だとお付き合いしづらいけどゲーム会社だったらOKといったことも実際は多くあり、法人化したゲーム会社だからこそ、機動力を持って動きやすくなることもあります。
法人化は人材採用の面も大きなメリットです。集英社ゲームズという形で法人化することでゲーム業界の他の企業さんと同じくプロフェッショナル人材を積極的に採用できるようになりました。