外国人観光客過多で今住んでいる街に住めなくなる

人手だけではなくて“土地”に与える悪影響も解説する。

「インバウンド需要から波及する土地需要の高まりにより、地価高騰を招きかねない。その結果、お年寄りをはじめ、一般人は都市で暮らせなくなるという問題が発生します。京都でも現在、“ジェントリフィケーション(低所得層の居住地域が再開発などによって活性化した結果、地価が高騰する現状)は問題視されています」

インバウンド需要に伴う問題として、オーバーツーリズムやゴミのポイ捨てが取り上げられるケースが多い。しかし、インバウンド消費の盛り上がりが、今住んでいる街を出ていくことになりかねない可能性があることは特に問題視されなければいけない。

インバンド価格という高級路線の落とし穴

そもそも、2023 年の訪日客消費は約5.3 兆円という過去最高を記録したとはいえ、インバウンド消費が日本各地を豊かにしているとは言い切れない。

「外部の資本が入り込み、インバウンドによる利潤の多くは地元に全く落ちずに外部に流れることもしばしば。なんとか地元を潤すために、しばしば“高級路線”が叫ばれます。つまりは世界の比較的富裕層の観光客をターゲットに据え、付加価値の高い価格帯でサービスや品物を提供することで、そこで働く人の所得も高くしようという路線です。京都市も高級化路線を目指して、超高級ホテルを建設したりなど進めています。

しかし、地元住民が利用できない商店やサービスで溢れることを意味しており、先述したジェントリフィケーションも相まって、今住んでいる地域で暮らすことは今後困難になりかねません」

豊洲・千客万来の「本まぐろ100%のネギトロが主役の3色丼」(6400円)
豊洲・千客万来の「本まぐろ100%のネギトロが主役の3色丼」(6400円)

豊洲の超高級海鮮丼「インバウン丼」に代表されるように、高級路線に舵を切る飲食店や宿泊施設は珍しくない。日本各地でそうした傾向が高まれば、国内で暮らす人は安定した生活を送ることが容易ではなくなる。インバウンド戦略推進は私たちの生活レベルを大きく変えるということは頭に入れておきたい。