「親近感を持つことと性愛の感情は別だからね」
──これだけ性愛における権力性の問題が明るみになってくると、権力を持った男性の中には「もう恋愛はするなってことか」と不満を述べる人もいます。そういった意見についてはどう思われますか?
そういう人たちには、具体的な助言が必要ですよね。私はけっこう知り合いにはこう言って回っているんです。
立場が下の者からの好意的な言葉は、基本リップサービスだと思ってください。
あと、親近感と性愛は別なので、肩を触られたり、ニコニコした眼差しで見られたことを「エッチしたい」と勝手に変換しないように。
親近感や仕事上の信頼感、尊敬と、性愛の感情は別だからね、と。
──その通りですね。
昔は女性が経済的に自立していなかったから、お嫁さん候補として一般職の子たちをたくさん採用して、すでに活躍して家を買えるくらいの収入のある年齢の男性たちと年の差で結婚していたわけじゃないですか。
今のように女性が男性と同じ初任給を得る時代にあっては、そうした常識が変わってくるんです。今は女性も同じ年代でパートナーを探すようになってきているから、50~60代くらいのおじさんから口説かれると「セクハラだ!」ってなっちゃうから、気をつけてねってことです。
──冒頭で、不同意性交等罪の施行によってセックス・スキャンダルの議論の焦点が変わってきているという話がありました。そもそも不同意性交等罪について、三浦さんはどう思われますか。
私は不同意性交等罪にはもともと反対していました。不同意性交等罪に問われる刑法犯と、ただのひどい男の間に明確な線がなくなってしまうからです。
今年1月、大阪地裁で性行為の同意を巡る裁判で無罪判決が出た事例がありました。
外国人男性が女性に誘われてシェアハウスに招き入れられ、共用部で飲んだあと女性の部屋で行為に及んだんです。「これは不同意性交だ」と女性のほうは訴えていて。でも証言を探ってゆくと、女性の供述にも揺れている部分があって。裁判官が、被告が避妊の配慮を欠いたことや事後の態度が女性の心証を損ねた可能性は捨てきれないと指摘しているんです。
裁判官が「犯罪は裁かれるべきだが、冤罪のほうが気をつけなければならない」ということで無罪判決をくだしました。
法律上、罪になることとひどい男は分けましょうね、っていうのが私の感覚なんですけど、現状では、不同意性交等罪に問われる刑法犯とただのひどい男の境界線は限りなく失われてしまっているんですね。