ホモソーシャルであることが必ずしも悪いわけではない

──都内の高級ホテルにおける松本人志氏の性加害疑惑の報道を「週刊文春」が報じました。二村さんはその報道についてどう思われましたか?

二村ヒトシ(以下同) 僕は松本さんとは年齢が1歳差で、同じ世代を生きてきました。昔、松本さんが放送作家の高須光聖さんとのラジオで、とあるAVを絶賛していたことがあって。それがソフト・オン・デマンドから発売されている、ひっこみ思案な女性が人前で排便することで自分を変えようとする姿を撮ったドキュメンタリーAV『大観衆が見つめる中で初めての公開生うんち』だったんです。このAVをネタとして笑うんじゃなく本気で褒めたんだとしたら、わかってる人だなぁ、と当時は松本さんにシンパシーを感じていたのですが、今回の報道のようなことをもしも本当にしていたとしたら、そんなことをしていて楽しいのかなと思います。

ダウンタウン・松本人志 写真/共同通信
ダウンタウン・松本人志 写真/共同通信
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──具体的にどういった点が問題だと感じましたか。

松本さんが実際に何をしたのかという確証はないので、あくまで一般論として話しますが、「週刊文春」の報道で「SEX上納システム」と名づけられているような、女衒(ぜげん)の役割の人間が権力ある男性に女性をあてがう集団というのは、お笑い界に限らず至るところに存在しています。

そうした行動の一番の問題点は、相手の女性の言うことをちゃんと聞いていないところです。最終的にセックスしたか、してないかはあまり関係ない。相手が本当は何を求めているかを一切考慮しないということは、その人間に対する侮辱です。彼らは自分たちのところに来る女性は侮蔑していい存在なのだと思いこんでいる。

──ホモソーシャルな集団がそうさせてしまうのでしょうか。

「ホモソーシャルだから悪い」みたいな論調もありますが、ホモソーシャルであることが必ずしも悪いというわけではないと僕は感じます。男性の集団が「みんなでSM倶楽部にお尻を掘られにいこう!」みたいな盛り上がりかたをすることだってありえる。もちろんそこに同調圧力があったら嫌ですけど、それで全員が楽しんでたら粋でかっこいい。

でも今回のようなケースは、その集団の男性たちが本質的に女性を甘くみて舐めているように感じられて、とにかく、かっこわるいですね。

──告発した女性が言ってることが、当時とは異なる点を非難する方もいます。

その女性が真実を言っているかどうかはそこにいた人じゃないとわからないし、当事者の気持ちが後になって変わることについても、無関係な周りがどうこう言えることではないと僕は思います。性愛の場において、弱い立場にある人は自分に嘘をつかざるをえなくなることがある存在です。告発するというのは、嘘をつき続けることに耐えられなくなったということです。AV業界で長年仕事をしていて、そうした状況には何度も立ち会ってきました。

──女性が本心を言えず、嘘をつかざるをえなくなる状況を作り出す権力性がよくないということですね。

権力を濫用することで、性愛の場面で相手の言葉に耳を傾けられないコミュニケーションになってしまうとしたら、その権力者は人間として非常にみじめだなと思います。