朝、カーテンを開け、雪が降っていることを知る。風はないが、視界がきかなくなるほどの大雪。道路や線路は遥か雪の下に埋まり、交通機関は最早まともに機能しないだろう。とても静かに、しかし確実に、人々は閉じ込められていく――こういう日は、ものすごく遠くて、途轍もなく巨大な世界について思いを馳せてしまう。
夜空を見上げ、天の理を知りたいと願う生き物は人間だけだ。地球は丸い。そして、太陽の周りを一年かけて回る。宇宙は今も膨張を続けていて――今では当たり前のように知られている常識。しかし、現在よく知られている宇宙の姿や成り立ちを合理的に説明できるようになるまで、人類は途方もない年月を要した。
ここで紹介する宇宙物理学者、佐藤勝彦さんの著書『増補改訂版 眠れなくなる宇宙のはなし』は、単なる科学ノンフィクションではない。古代から現代に至るまで時代を代表する天才たちが、人類最高の武器である知能を以て宇宙の真の姿に迫っていく壮大な物語として、非常にわかりやすく書かれている。
自然界の法則を神話ではなく、合理的な思考によって真実へ導こうとする自然哲学こそ、現代の宇宙観の根底にあるものだ。しかし、それに警鐘を鳴らした古代キリスト教会の教父、アウグスティヌスの主張がとても興味深い。
「この宇宙は無から生まれた」「宇宙が始まる前に時間はなかった」――無から有を生み出せるのは神をおいて他にはないと、その偉大さを称えようとした結果、合理性を重んじる現代宇宙論の考えと一致してしまう……なんとも「物語的」ではないか。
宇宙にまつわる話といえば、子どもの頃から『大長編ドラえもん10 のび太とアニマル惑星』が大のお気に入りだ。大長編ドラえもんは宇宙を舞台とした物語がいくつかあるが、その中で私はこの作品が一番好きである。
冒頭から、パジャマ姿でピンクのもやの中をさまようのび太。昔のドラえもんは、どこか不気味だった。辿り着いた先は、地球を遥かに凌駕する科学力で、争いもなく豊かな生活を送る動物たちの星。彼らはみな高度な知能を有し、二足歩行する。優れた環境技術で今流行りの「持続可能な社会」を完全な形で実現している理想郷に、人間は一人もいない。
動物たちは、ある神話の神を信仰している。太古の昔、動物たちは月で暮らしていて、ニムゲという悪魔族に虐げられていた。それを哀れに思った神さまが、月からアニマル惑星まで「光の階段」をかけ、動物たちを移住させたというものだ。実はこの神話、彼らの世界においてまったくの作り話ではない。大昔、動物たちは科学の力で、ニムゲたちの支配する月から逃れてきたのだ。
神とは、光の階段とは、ニムゲの正体とは一体なんなのか……子どもの頃、のび太たちの大冒険に胸を躍らせつつも、どこか空恐ろしかった。大人になってからもこの物語の漫画と映画は、何度か見返している。