マリオットとヒルトンの利益率が高い理由
稼働率は2019年の水準に戻り切っておらず、客室単価もわずかな増加に留まっている。それにも関わらず、3社は営業利益率を高めている。2019年と2022年の営業利益率の比較したデータがある。
マリオットは8.6%から16.7%、ヒルトンは17.5%から23.9%、ハイアットは4.5%から5.2%に上昇している。
なお、日本が世界の誇る帝国ホテルの営業利益率は3.2%ほど。インバウンド需要が盛り上がっていた2018年~2019年も営業利益率は8%台だった。マリオットとヒルトンは稼ぐ力が比較にならないほど高まっている。
マリオット・ヒルトンの2社とハイアットは、同じホテルチェーンでも営業利益率が大きく乖離している。これはビジネスモデルの違いによるものだ。
マリオットとヒルトンはMC(マネジメントコントラクト)方式が主体。これは土地や建物を所有するオーナーが、運営会社に経営を委託する方式だ。オーナーはホテル運営に必要なスタッフや什器などを揃え、マリオットやヒルトンは総支配人などの幹部人材を派遣。予約システムやホテルのブランドを付与する。
これと似た方式にフランチャイズがあるが、オペレーションノウハウやブランドの付与はあるものの、経営や現場を支える幹部社員は派遣されない。
マリオットやヒルトンはホテルを所有せず、現場オペレーションに必要なスタッフを抱える必要がないため、利益率が高いのだ。これをホテルの所有と運営の分離と呼ぶ。2社がホテルの巨大チェーンに成長できたのは、ホテルの所有に伴う投資が必要なかったためだ。
その一方で、ハイアットはその分離がしきれていない。
こうしたビジネスモデルの違いは数字に表れている。マリオットは総資産に占める固定資産の割合は6.2%。対して、ハイアットは19.3%だ。資産を所有してホテルを運営すると、固定費が重くなって利益が出づらいという特徴がある。