複雑な母娘関係
取材中、青山さんは何度も、「母のことは嫌いです」ときっぱり言った。しかし現在も交流はあり、時々一緒に旅行に行ったり、外食に行ったりしている。
旅行に行けば、待ち合わせ場所に2時間以上遅れてきたり、「今どこにいるの?」と電話をすれば、全然とんちんかんな場所にいたりしてイライラさせられることも多い。外食をしても会話が噛み合わず、怒りを覚えることも少なくない。
そのため青山さんは、母親と一緒にいる間はスマホをいじっていて、全く会話をしないことも珍しくないという。それでも不思議なことに、青山さんの言葉の端々からは、母親に対する〝愛情〟が感じられた。
「相変わらず学歴至上主義者なので、孫の教育にもすごい関心があって、娘の私立小の学費とかお教室代金とか、年間300万ぐらいかかるんですが、『もっといい教室行きなさい』って言って出してくれるんですよ。
食事に行っても、旅行に行っても、全部払ってくれるし、父方の祖母が施設に入っているんですが、その施設の費用も母が出しています。お金を出すだけじゃなくて、時々会いに行ってあげる優しさもあって……。母を憎みきれないのは、そうした優しさを感じることや、〝愛情〟をかけて育ててくれたことが分かるからですね」
学歴至上主義の母親は、青山さんが宝物だったが故に、教育面や異性との交際面で激しい過干渉になった。青山さんが思春期を迎えると、衝突することが増え、時にひどいことも言われたが、それでも青山さんには、母親の〝愛情〟は伝わっていたのだ。
青山さんが娘を妊娠したとき、こんなことがあった。
自身に甲状腺関係の疾患があることが判明し、不安になった青山さんは、検査結果が出る前にネットで『甲状腺 妊娠』などと調べては、正確なソースも確認せずに、「障害児が生まれる可能性がある!」と動揺し、泣いて過ごしていた。
すると母親から、「どんな障害があっても私は愛する。大丈夫だから安心して産みなさい」と言われ、とても心強かったという。
「夫も、『本当に優しくていい人だけど、不器用なんだよね。不器用だから、やり方が全然間違っているんだよね』ってよく言っています。夫からすると、私もそうらしいんですよね、娘に対して。『すごく愛情はあるけど、不器用だよね』って言われます」
青山さん母娘の、複雑な信頼関係が伝わるだろうか。