恩恵以上に大きい、子育て世帯の失望感

今回の見直し案は与党での議論後、年内にまとめられる税制改正大綱で決定し、2026年から適用される見通しだ。現時点ではまだ確定した内容ではないが、例年の税制改正大綱の流れから考えれば、おそらく現状でほぼ決着するだろう。

首相はすでに「廃止を前提として検討している事実はない」とも述べており、少なくとも児童手当の支給以上の増税はなさそうだ。ただ支給と増税を相殺した結果、年間で約4~9万円という子育て支援策が、子育て中の世帯にとってどれほどのインパクトになるかには疑問が残る。

子育て支援策は目下、児童手当以外に住宅ローン減税や生命保険料控除での子育て世帯への税優遇、子ども3人以上世帯への大学授業料無償化なども同時検討されている。パッケージで支援するという方向性に異論はないが、とりわけ税に関して言えば、多方面からの優遇は当事者が自分にとって得なのかどうかを判断するのがかえって難しくなる可能性がある。年末調整や確定申告での書類準備や事務処理も煩雑になるはずだ。

またこれらの税制優遇が実現すれば、持ち家に住む人や生命保険に契約している人は対象になるものの、賃貸に住んでいる人や生命保険に加入していない人にはメリットがない。子育て世帯内の分断を招くような形で支援策が行われることにも、いささか首をかしげたくなる。

シンプルに、扶養控除を維持・拡充するわけにはいかないのかという声も聞く。子育て支援に対する国の歯切れの悪い姿勢は、子育て中の当事者たちにとっては、実質的な恩恵以上に心理的な失望感につながる懸念をぬぐいきれない。

「子育て罰」を可視化する扶養控除制度…親が稼ぐほど子どもが損をする日本の教育費の行く末_3
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取材・文/加藤梨里

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文/加藤梨里