社会保障費の国際比較―日本よりも多い国・少ない国
日本の社会保障費の予算額は131兆円(2022年)で、対GDP(国内総生産)比で23.2%になります。
内訳は、年金に58.9兆円(44.2%)、医療保障に40.8兆円(31.5%)、子育て支援などその他福祉に31.5兆円(24.0%)などです。財源は税収が5割、国債が4割、1割が社会保険料などで賄われています。日本の社会保障制度は、他国と比べてどのような位置づけにあるのでしょうか。OECD(経済協力開発機構)の統計を使って比較してみました。
図表4-1は、2017年における各国の社会保障費支出のGDPに対する比率を示しています。比率が高い国の分布を見ると、西ヨーロッパ諸国やアメリカ、オーストラリアなどが日本よりも高い一方で、ヨーロッパでも東部や南部の国々では低くなっています。
社会保障支出の対GDP比が高いほど公的サービスが充実しているとは限りません。例えばアメリカは日本よりも数値は高いですが、公的な医療保険制度に加入している人は高齢者や低所得者など、人口の2割程度に限られ、大部分の人が民間の医療保険制度を利用しています。
図表4-2は、家族関係の社会保障費がGDPに占める割合を示したデータです。西ヨーロッパ諸国が総じて日本よりも比率が高い一方で、アメリカは、34カ国中最下位です。
家族関係の社会保障費について、ILO(国際労働機関)は、「子どもその他の被扶養者がいる家族(世帯)を支援するために提供される給付が対象」と定義しています。日本では「児童手当」や「扶養手当」がこれにあたります。
イギリスの児童手当は「チャイルド・ベネフィット」と呼ばれています。満16歳未満(学生は19歳未満まで)の子どもを持つ世帯に対して、第1子に対して週21ポンド(約3400円)。第2子以後は週14ポンド(約2300円)が支払われます。
日本の児童手当は3歳まで月額1万5000円、中学生までが月1万円で、一月4週で計算すると、イギリスとあまり変わりませんが、日本では所得上限があり、すべての世帯が受給できるわけではありません。
アメリカには、児童手当の制度自体がなく、申請に基づいて所得税から一定額を控除することで補助が行われています。控除額は、収入にもよりますが、年間3200ドル(約35万円)程度の税金が還付されています。
図表4-3は、高齢者に関わる社会福祉支出の対GDP比を示しています。
西ヨーロッパ諸国では、高齢者向けの社会保障費がGDPに占める割合は日本よりも多い国が目立ちます。1位ギリシアの高齢化率(65歳以上の人口が占める比率)は、22.8%と、日本(29.1%)よりも低いですが、高齢者向けの社会保障費の比率は日本よりも高くなっています。一方で、韓国の高齢化率は2016年に13.3%だったものが2021年には16.8%にまで上昇しており、今後高齢者関係の社会保障費が急増していく可能性があります。
日本の高齢者向けの社会保障費は、2017年度は79兆円で、社会保障費全体に占める割合は66.3%に達しました。1980年に約10兆7500億円にすぎなかった高齢者向け社会保障費は、40年で7倍以上に膨れ上がっています。内訳は年金が5割、医療保障が3割、福祉その他が2割で、全体の6割が社会保険料で、4割が税金で賄われています。