パレスチナと他国の先住民族の抱える問題の違い

先住民族とパレスチナ人との対話は1960年代以降、アメリカインディアン運動の活動家とブラック・パンサーが世界的な解放運動に着目して以来、プエルトリコ民族解放運動、アメリカインディアン運動、ブラックパワー運動、南アフリカのアパルトヘイト撤廃運動などと関係を築き、帝国主義に対する共通の闘いとして続いてきた。

パレスチナと他国の先住民族の抱える問題の違いは、イスラエルには世界中に無数の強力な支援者がいることだ。

白人至上主義と植民地主義をバックとした欧米を後ろ盾とするイスラエルに各国の先住民たちが「先住民性」を感じることはない。パレスチナを圧倒的弱者にさせる力学を、他国の先住民族たちは黙って傍観することができないのだ。

テキサス大学の先住民グループ「ダンザ・オリニョロトル」のアステカダンサーたちによる親パレスチナ行進 写真/共同通信
テキサス大学の先住民グループ「ダンザ・オリニョロトル」のアステカダンサーたちによる親パレスチナ行進 写真/共同通信

「パレスチナ人の先住民性」という共通の闘いの新たな主軸

イスラエルは今「抑圧者」として、ガザで壁の中に市民を閉じ込め、逃げることができない場所で攻撃を続け、欧米の権力者たちはその行為を傍観している。
まるで「存在しない」かのように命が消され、土地が奪われていく光景は欧米の植民地時代を嫌というほど先住民に思い出させる。

「みんなが自由になるまで、誰も自由ではない」というフレーズはフェミニズム運動でよく聞かれるが、今SNSで新パレスチナ派を自称する先住民の若者たちの投稿には「パレスチナ人の自由なくして、先住民の自由はない」「先住民ならば、パレスチナ派であるべきだ」という言葉が頻繁に登場する。

相互連帯によって生存のための戦術と戦略を互いから学び、互いに起こっていることをSNSなどで拡散するのには意味がある。先住民の闘いは国会内で抑えこまれ、他国にその問題が知られることに限界があった。
だが、SNSの登場によって、今先住民やパレスチナの世代は世界に向けて「何が起きているのか」を発信できる。「黙って奪われること」を抑圧者に強制されてきた者たちは、新しい抵抗手段を手に入れた。

抑圧者は抵抗する者を「黙らせ」「国際社会に何が起きているかを知られない」ことが狙いでもあると「抑圧されてきた側」の先住民たちは歴史的に十分承知している。だからこそ、SNSを使う世界中の若者に「中立や沈黙、SNSの投稿が減ることこそがネタニヤフ首相の思惑だ」「声を上げ続けることには意味がある」と繰り返し言い続けている。

こうしてパレスチナ人の先住民性は現代の共同闘争における新たな主軸として、各国の先住民に新しい概念的な道筋を示している。

「自分の特権を利用して、空間を破壊しているイスラエル政府のイデオロギーに抵抗しよう」

そのような「先住民コミュニティ・ケア」の輪は拡大を続けている。「先住民性」によって共鳴しあう先住民族間のグローバルネットワークによって、互いの闘いは拡大・強化を続けるだろう。

文/鐙麻樹

【参考文献】
『Indigenous Solidarity Testimonies and Narratives』 Foreword by Hamid Dabashi Edited by Suzannah Henty & Gary Foley

Toronto Star “ Why some Indigenous advocates and Palestinians feel they’re ‘natural allies’”

Chronique de Palestine “ Se servir de l’indigénéité dans la lutte pour la libération de la Palestine “

『Decolonization: Indigeneity, Education & Society』“American Indian studies and Palestine solidarity: The importance of impetuous definitions” by Steven Salaita

Queen’s University “Decolonizing and Indigenizing”

#1:なぜハマスは今、イスラエルに攻撃をしかけたのか
#2:妊娠9か月パレスチナ人女性の悲痛な叫び
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