「国民が知らぬ間に法案を成立させたい」とも思える異常なスピード感
この改正案が不気味な理由として、従来の議論から完全に逸脱した内容にもかかわらず、政府が異常なスピードで物事を進めていることが挙げられる。直近の出来事を時系列で整理すると以下のようになる。
9月7日:CSTI資料を通して、従来の国際卓越研究大学をめぐる議論から大きく逸脱した内容で国立大学法人法改正が検討されていると発覚
9月22日~10月27日:文科省が国立大学協会の各地区の支部会議等で改正案を順次説明。実態が徐々に大学関係者に浸透し始める(9月22日 九州、9月29日 近畿、10月10日 関東・甲信越、10月12日 中国・四国、10月13日 理事会、10月17日 北海道、10月27日 東海・北陸)
10月17日:自民党部会で改正案を審議
10月31日:政府は改正案を閣議決定
11月7日:衆議院で改正案が審議入り
11月17日:衆議院 文部科学委員会で改正案を可決 *審議時間は11月15日の僅か5時間のみ
11月20日:衆議院 本会議で改正案を可決
12月1日〜:参議院で改正案が審議入り(予定)
国立大学協会への説明完了から1か月も経たないうちに法案が衆議院を通過。
「国民が知らぬ間に法案を成立させたい」という政府の本音が聞こえてきそうなほど拙速だ。こうした状況に危機感を抱いた大学関係者の有志(「稼げる大学」法の廃止を求める大学横断ネットワーク)は反対署名の立ち上げに加えて、11月7日(審議入り当日)に議員会館で記者会見を開催。法案の問題点をメディアに具体的に説明した。
同会見には筆者も参加し、新聞は複数社(朝日新聞、毎日新聞、東京新聞等)が参加。しかし、法案が衆議院を通過した11月末現在もテレビ局の関連報道は少なく、国民のほとんどが知らぬ間に問題だらけの法案を静かに成立しつつある。
#2へつづく
#2 大学教育崩壊につながる「国立大学法人法改正案」の問題点とは…民間企業が「稼げる大学」法案で大学を食い物にする矛盾
取材・文/犬飼淳