国立大学法人法改正と地続きの学費値上げ問題

昨年10月〜12月に岸田内閣および4党(自民・公明・維新・国民民主)が異様なスピード感で、立法事実を示さないまま強行に成立させた国立大学法人法改正。「学問の多様性喪失」と「学生の教育環境悪化」に加えて、いわゆる「稼げる大学」を過熱させる内容のため、将来的な学費値上げにつながることが当時から懸念されていた。

*上記は国立大学法人法改正廃案を求める院内集会(2023年12月5日)の映像。21分7秒〜37秒で吉良よし子議員(共産党)が国立大学法人法改正が学費値上げに繋がる懸念に言及

そして、この懸念を取り上げてからわずか半年足らずの今年5月、東京大学が来年度から年間約10万円の学費値上げを検討することが発覚した。この学費値上げをめぐる問題は大きく以下3点に大別されると筆者は考えている。

(1)世間一般の理解以上に、東大生に限らず学生側の不利益が大きい
(2)東大の不透明な意思決定プロセスは学生を無視している
(3)そもそも東大の学費値上げの必要性に大きな疑問符が付く


この3つの問題点について、それぞれ具体的に解説する。

<(1)世間一般の理解以上に、東大生に限らず学生側の不利益が大きい>

(1)については、物価高騰の時勢も相まって一般的な反応として「よりよい教育のために年間10万円の値上げは許容範囲では?」「そもそも東大生の親は平均年収が高いから問題ないのでは?」と感じた読者も多いだろう。しかし、以下の通り実態は大きく異なる。

・学費を自ら支払わなければならない事情がある東大生にとって、年間10万円は決して安くない。バイトを増やしたことで各基準(扶養控除103万円、勤労学生控除130万円 等)を越えれば新たな不利益も被る可能性がある。

・授業料減免などの措置はあるが、現行の仕組みにも問題があるため、学費値上げ後に不利益を被る学生が増える。

(例)親の収入が基準となるため「親の収入は高いものの関係性が悪くて援助を受けられない学生(いわゆる「経済的DV」を受けている学生)」は支援からこぼれ落ちる。また、手続きが煩雑過ぎるため、減免を受けていない他学生に対して心理的な負い目を感じる等。

・東大が学費を値上げすれば、歴史的にも他大学が追随するため、東大に限らず「すべての高等教育」のハードルを引き上げる恐れが極めて高い。つまり、裕福かつ親との関係性がいい学生しか大学に行けなくなる恐れがある。