「子育て罰」を可視化する扶養控除制度
現在議論されている児童手当拡充が実現した場合、一部の子育て世帯の税負担がかえって増える可能性も指摘されています。現行の制度では高校生にあたる16歳以上19歳未満の子どもを扶養する世帯では、所得税では38万円、住民税では33万円の「扶養控除」の適用を受けられます。適用することで課税対象になる所得額を減らし、税が少なくなる仕組みです。しかし児童手当の拡充と引き換えに、この扶養控除が廃止または縮小されることが検討されています(2023年10月現在)。
そもそも、今ある児童手当は、かつて存在した「年少扶養控除」の代わりに支給されるようになったものです。年少扶養控除とは過去に所得税にあった制度で、2010年までは15歳までの子ども1人につき38万円が扶養する親の所得から控除されていました。ところが児童手当の導入を名目に、2011年の税制改正によって廃止されてしまいました。
しかも、年少扶養控除は所得にかかわらず子どもが16歳未満であれば適用されましたが、児童手当では所得制限が設けられてしまったのです。児童手当をもらえる世帯にとっては、年少扶養控除がなくなったかわりに児童手当が支給されるようになったといえますが、所得制限の対象世帯では単に増税されただけというわけです。
同時に、16歳から19歳の子どもを扶養している人にはそれまで子ども1人につき63万円の扶養控除が使えましたが、こちらも38万円へと引き下げられてしまいました。税の負担増は高校無償化によって補うということでしたが、こちらも所得制限が設定されて一部の世帯はいつのまにか恩恵がまったくなくなってしまったのです。
最も教育費負担の重い大学生時期である19歳から22歳の子どもについては、今でも「特定扶養親族」として1人63万円の扶養控除を受けられますが、高校生までは税の負担が重いうえに、親が高所得だと国の給付も受けられないわけです。
なお、23歳以上の子どもを扶養している場合には今でも扶養控除は1人あたり38万円ですし、70歳以上の親などなら48万円、同居していれば58万円です。同じように家族を養っていても、高齢の親なら扶養控除を受けられるのに子どもならゼロというのはいささか不公平に感じてしまいます。
#1 幼稚園から高校まですべて公立でも1000万円かかる…少子化なのに親の負担が重い国、日本では子どもはぜいたく品なのか?
文/加藤梨里