なのに「異次元の少子化対策」への反発の声も

まず、子育ての入口となる出産費用が高額です。現在は帝王切開などを除けば、出産には保険が利かず、全額が自費扱いです。保険適用外のため金額は各病院が設定していますが、この10年で毎年約1%ずつ上がり続け、2020年度の全国平均は46.7万円となっています。

ただし、国からの補助はあります。子どもを産むと、2023年4月以降は国から子ども1人あたり50万円の出産育児一時金が支給され、入院時に手続きをしておけば、産院で支払う出産費用からこの分が差し引かれる制度もあります。

また先述の「異次元の少子化対策」では、早ければ2026年度にも出産費用を公的保険の対象とすることも検討されています。しかし、この財源は働く人の社会保険料や高齢者の医療費負担の引き上げによって確保される見込みで、特に子育て世帯以外からの強い反発を招いています。

幼稚園から高校まですべて公立でも1000万円超の現実…少子化なのに親の負担が重い国、日本で子どもはぜいたく品なのか?_4
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ちなみに出産にかかる50万円はあくまでも分娩やその前後の入院のみにかかる平均額で、個室や高級な産院、無痛分娩などを選んだからというわけではありません。そもそも子どもを妊娠すると出産まで定期的に妊婦健診や検査を受けることになり、補助制度はあるもののこれらの費用にも公的な保険は利きません。

子どもを授かった途端に、大人だけの生活では思いもよらなかった出費が次々と発生するのです。妊娠や出産の時点でこれだけ出費が嵩むとなると、子どもを持つことはそれだけで「ぜいたく」と言われてもしかたがないことかもしれません。

なにより、子どもを一人前に育てるにはおよそ20年という長い年月がかかります。出産は子育て費用の序章にすぎません。それからの成長のあらゆる局面で、親は想像を超える出費に直面することになります。

#2「子育て罰」と思わされる現在の扶養控除制度…親が稼ぐほど子どもが損をする日本の教育費の行く末

文/加藤梨里

『世帯年収1000万円:「勝ち組」家庭の残酷な真実』(新潮社)
加藤梨里
幼稚園から高校まですべて公立でも1000万円超の現実…少子化なのに親の負担が重い国、日本で子どもはぜいたく品なのか?_5
2023年11月17日
1760円
224ページ
ISBN:978-4-106110207
タワマンに住んで外車に乗る人まで国が支援するのか――所得制限撤廃の話になると、きまってこんな批判がわき起きる。だが、当事者の実感は今やこの言葉とはかけ離れている。かつて〝勝ち組〟の代名詞でもあった「年収1000万円」世帯は、不動産価格の高騰、実質賃金の低下、共働きで子育てに追われる夫婦の増加などによって、ギリギリの生活設計を迫られているのだ。様変わりした中流上位層のリアルを徹底分析。
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