300億円の改善効果を見込む花王

花王が大幅な減益となっているのは、構造改革費用を計上しているためだ。2023年1~9月においては、201億円の営業利益下押し要因となっている。

同社は今年8月3日に業績予想の下方修正を発表した。1200億円としていた営業利益を、半分の600億円に改めたのだ。600億円を構図改革費用として計上すると明らかにした。

花王は家庭用洗剤や生理用品、ヘアケア商品は好調だが、消毒剤市場の縮小を受けた業務用衛生製品、中国市場が低迷している化粧品で苦戦している。

海外で販売されている花王の家庭用洗剤
海外で販売されている花王の家庭用洗剤

同社が取り組む構造改革においては、化粧品ブランドの再編や整理を行うほか、生産体制の最適化などを進めている。花王は2024年からその効果が出始め、2025年には300億円の改善効果が継続すると発表している。

ライオンはハンドソープ、ボディソープなどのビューティケア事業が今ひとつ伸びていない。2023年1~9月の売上高は前年同期間比1割減少している。そうした中で、同社が注力しようとしている事業が、海外展開だ。アジアでの競争優位性を創出するグローカリゼーション戦略を掲げ、最重要市場と位置付ける中国への展開を強化している。さらに2024年までに2か国以上の新規国・エリアへの参入を図るとしている。

もはや日用品や消費財の分野は海外展開なしでは成長が語れなくなってきた。金利差を背景とした円安は進行する一方で、国が企業の海外進出を後押ししているようにさえ見える。コロナ禍を乗り越えた、消費財メーカーの新たな勢力図争いが始まっている。

取材・文/不破聡