原材料費、光熱費の高騰以外の大きな問題
「大津家」グループでは、ラーメンの作り方はもちろんだが、接客・ホスピタリティを大事にしている。宅配サービスや冷凍技術の向上、コンビニラーメンの進化など、次々とライバルが増える中、「お店でラーメンを食べる」ことの価値を高めるために飯島代表は注力してきた。
「ラーメン職人は技術職だと思っています。目の前のお客さんひとりひとりに笑顔で美味しい一杯を提供することがお店の価値です。家系ラーメンなら麺のかたさ、味の濃さなど、お好みを聞く。二郎系ならヤサイ、ニンニク、アブラなど、お好みを聞く。オペレーションに負荷をかけないために紙に書いてもらうことも検討しましたが、そうしたホスピタリティが根強いファン作りにつながるし、お客さまもそういうところを見ていると思います。そこは妥協せずにやってきました」(飯島代表)
しかし、そうした流れの中でグループ全体での従業員の入れ替わりが激しく、全店舗を運営していくことが厳しくなってきた。新しい従業員が入っても、一人前に育つまでには長い年月がかかり、その前に辞めてしまうこともある。六浦関東学院前店でもUberEatsを取り入れるなどして売上の改善を図ってきたが、ついにグループ全体のなかで最も売上規模の低い同店を閉店することが決まった。
「コロナ禍以前は、大学の先輩が後輩を連れてきて、次の年になるとそのまた後輩を連れてきて、という伝統のようなものがあったんですが、それがコロナを境にパタリとなくなってしまいました。『やめるのはもったいない』という声も大変多くいただいたのですが、一度幕を下ろすことになりました」(店主・飯島さん)
閉店を発表すると常連客に加えて、関東学院大のOB、昔働いていた従業員が多数訪れ、閉店を惜しんだ。
「近くで働いていてよく来ていたんですが、閉店だと聞いて同僚みんなで食べに来ました」(40代男性)
「閉店と聞いて慌てて食べに来ました。学生のころによく通っていたお店なので本当に寂しいです」(30代男性)
閉店前、「神豚」のまわりはこうした声であふれていたという。
「これからは横須賀中央にある本店に移ります。今は一緒にお店を支えてくれる人を育てる時期。まだまだ諦めていません。いつかまた、時が来たらチャレンジしたいです」(小寺店長)
小寺さんのラーメン道はまだ終わっていない。
#2 原価率50%を超えるこだわりの人気ラーメン店が突然の閉店宣言
取材・撮影・文/井手隊長