敷地面積が小さく、品揃えが限られる店舗だからこそできること
無人書店「ほんたす」溜池山王店に対するネット上の口コミを見ると、そのあまりの小ささに文句をつけている人が多い。
だけど、現状ではほぼ崩壊しつつある、ごく小規模の書店が成り立つか否かこそが、今後の書店業界存続にとっての大きなポイントになるのではないかと思う。
店舗が狭くて品数が少ないことのデメリットは、特定のジャンルやテーマに焦点を絞りやすいというメリットに変換することも可能だ。
「ほんたす」溜池山王店は、ビジネス街の駅ナカという立地のため、ビジネス書と実用書、それに新刊ベストセラー書を中心とする品揃えになっていたが、書店は規模が小さいほど、場所柄に合わせてセグメントしたラインナップを提供することができる。
従業員を常駐させる必要がない無人式であれば、運営コストを低く抑えられるので、従来型有人書店ではすでに立ち行かなくなりつつある、専門性の高い小規模書店を維持できるのではないかと思うのだ。
観光地に設置された無人書店は、その地域の観光名所や歴史に関連する本を多く取り揃え、観光客に魅力的な情報を提供できるだろう。
大学の周辺に設けられた無人書店は、学術書や専門書を豊富に取り揃え、学生や研究者をサポートできるかもしれない。
スタジアム近くの無人書店にはスポーツ関連書やアーティスト関連書を、山深い地方のサービスエリア設置された無人書店にはアウトドア関連書を、大きな病院内の無人書店には健康関連本や入院患者のための心休まる読み物を、サーキットの中に設置した無人書店にはモータースポーツ関連本を……といった具合に、その地の特徴に即した無数の展開を考えることができる。
もちろん接客以外の仕事、たとえば品出しや返品作業、店舗清掃や書棚整理、機器類のメンテナンスなどのために、無人書店であっても人員は必要だが、小型であるほどその数は少なく済み、1日のうちに一人で何店舗か回れば事足りるかもしれない。
そして人件費を筆頭とする運営コストを抑えられれば、以前より客の絶対数が少なくなっていたとしても、店舗は十分持続可能になる。
本屋の実店舗は無人化させることにより、電子書籍やオンライン書店と共存しながら、読書文化を支え続けるという、素敵な未来を想像せざるを得ない。