上空で輝く雲海
また、飛行機の窓から下を見ると、海上は晴れているのに、陸上では雲ができている光景に出会うことがあります。それは、海と陸では比熱が異なるからです。
海よりも陸のほうが比熱は小さく、「温まりやすく冷めやすい」という特性があります。比熱とは「ものの温度を上げるのに必要な熱量」のことで、陸の比熱は海と比べて4~5分の1くらいです。日中に日差しを浴びた陸の地表は急速に温まり、熱対流が発生します。
その熱対流による「上昇気流」が低い空に積雲を発生させるのです。
つまり、陸のほうが海よりも大気の状態が不安定になりやすいということです。海は、日中でも温まるのに時間がかかるため、海上の大気は比較的安定しています。積雲を発生させる対流が起こりにくいのです。
雲の状況、特に積雲の発生状況を見れば、どこで大気の状態が不安定になって熱対流が発生しているのか、どこが安定しているのかがわかります。
飛行機に搭乗する前には、これから空の旅でどんな風景に出会えそうか、気象衛星画像をチェックするのも楽しいです。
航路の低い空に雲が広がっていればブロッケン現象に出会えることが期待できますし、高い空に氷の雲が多くあれば、その上空で眩しく輝く雲海が待っていることが想像できます。
文/荒木健太郎
写真/©読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし ©shutterstock