まわりに流されやすいという、日本人ならではの特性
2021年6月に政府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針」に「選択的週休3日制の促進」が加えられたことが注目を集めている。
政府としては、ワークライフバランスの実現、長時間労働の防止などの狙いがあるようで、企業の導入を推奨する方針のようだ。現在、ファーストリテイリング、日本マイクロソフト、電通など大企業の一部で導入されており、注目が集まっている働き方だが、現状一般企業への導入はさほど進んでいない。
その一因として、日本人の脳の仕組みが大いに関係しているかもしれない、というのは脳科学者の奥村氏である。聞いたところ、大きく2つの理由があるという。
「週休3日制がなかなか導入されないのは、“まわりに合わせよう”という思考が日本人には強いからだと考えられます。古来より、日本は四方を海で囲まれた島国という地政学的に特殊な場所に位置しており、欧米、大陸とは異なる社会性が育まれてきました。
日本で村社会を生きるとなると、少なからず他人に対して気を遣って生活しなくてはいけません。なぜならば、仮にほかの村民に嫌われて別の村に行こうとしても、大陸とは違い海に囲まれているため遠方の地に移住しづらく、全くの新天地でのリスタートがしづらいからです。『村八分』という言葉に代表されるように、邪魔者は排除するというのは日本社会における特色と言えるでしょう。
ですから必然的に、変な人に思われたくないという意識が常に働きます。なので、週休3日制が導入されづらいのは、企業の代表が他社の導入状況と比較し、『時期尚早だ』と空気を読んで先延ばしにしている……といった具合に思えます。
現に週休2日制が本格的に導入された1980年代当時も、当初は抵抗が強く、違和感を覚える方が大半でした。要するに日本人は変化、変革を恐れている民族なのでして、極端にパラダイムシフトでも起こらなければ現状は大きく変わらないでしょう」