「日本版DBS」の落とし穴 「わいせつ教員のほとんどが初犯」
これらの結果も踏まえ、大橋准教授は「小児性愛者は周到に学校現場はもちろん、塾や学童、保育園、スポーツクラブといった、子どもと関われる職場に入り込もうとしています」と指摘する。
教育現場で子どもが性被害を受ける事案が後を絶たないことを受け、政府は「日本版DBS」制度の導入を引き続き検討しており、今後は性犯罪歴の確認を義務づける事業者の範囲について詰めていく方針だ。
しかし、日本版DBSですべてが解決するわけではない。
「1985年1月~2023年5月の子どもへのわいせつ事案のべ6000件の報道記事を調べた結果、過去にも同様の問題を起こしていたことがはっきりとわかるケースは、保育士1人、教員1人だけでした。
同様に、乳幼児が被害に遭った事例について、同時期ののべ212件の報道を調べたところ、過去に処分歴や検挙歴があったとわかったのは1人だけ。
自分の小児性愛性を自覚して保育士を志した人物も10人程度いました。このことから、ほとんどのケースは、性犯罪歴に基づいて判断する日本版DBSだけでは防ぎきれないと思います」(大橋准教授)
かつて問題を起こした人間が、氏名の変更や、不祥事を起こした県とは別の県の学校の教員となって、再びわいせつ事案を起こすといった事件はこれまでも発生しており、このようなケースは日本版DBSで防ぐことができる。
だが、大多数を占める初犯の事例は日本版DBSを導入しても防ぎきれないというのだ。
そこで、大橋准教授が導入の必要性を訴えるのが、小児性愛障害を診断できるスクリーニングテストの活用だ。