録音したお経を流してスタッフが手を合わせるだけの「直葬」
この例からわかるように、低所得の人たちは仕事をしていても、雇用形態や勤務形態から孤立しているケースが少なくない。家で急死しても、それを確かめる人がいないのだ。それゆえ、発見が遅れることになる。
もう一つ、目を向けなければならないのが、身寄りのない生活困窮者の埋葬についてである。
一般的に、日本で独居やホームレスの人が亡くなれば、自治体が親族に連絡をして事情を話し、遺体の引き取りを依頼する。親族が承諾すれば、彼らが自腹を切って葬儀から埋葬までを執り行う。
ところが、自治体から連絡を受けた親族の方が、遺体の引き取りを拒否することがある。生前に故人との関係が悪かったり、経済的に引き取る余裕がなかったりするケースが大半だ。こうなると、自治体自らその遺体の処理をしなければならなくなる。
この際、自治体は契約している地元の葬儀会社に業務を委託するが、一人当たりの予算は決まっている。地域によって差があり、一、二級地(東京二三区などの大きな町)なら大人が二〇万一〇〇〇円、小人が一六万八〇〇円、三級地(地方の小さな町や村)だと大人が一七万五九〇〇円、子供が一四万七〇〇円となっている。業者はこの金額ですべてを行わなければならない。
だが、現実的にはこの金額で葬儀から火葬、そして納骨までを行うのは難しい。葬儀会社の社員は次のように語る。
「国から出るお金でできるのは、せいぜい直葬と呼ばれる簡単な葬儀を行って火葬するところまでです。直葬というのは、お寺に依頼せず、DVDなどで録音したお経を流してスタッフが手を合わせるだけの葬儀ですね。火葬場は火葬の金額は決まっているために値引きはできません。なのでご遺骨にするまでが私たちの役割となります」