格闘家になる夢が映画で叶った
──『春に散る』は本格的で迫力あるボクシングシーンも注目されています。横浜さんは極真空手の経験者だそうですが、この映画への出演の決め手は?
最初に脚本を読んだとき、翔吾の“今を生きる”というポリシーに共感したんです。不公平な判定でボクシングから離れ、情熱を失っていた彼が、同じ元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)のパンチをくらって「これだ!」と気づく。そして仁一にボクシングを教えてほしいと懇願し、断られても「今しかねえんだ」と食い下がるあの熱い気持ち……。翔吾の気持ちや行動には共感する部分が多く、縁を感じました。
あとはボクシングに挑戦できることも魅力でした。僕は役者にならなかったら格闘家を目指していたと思うので、翔吾役で夢が叶うと思ったんです。でもリスペクトがあるからこそ、生半可な気持ちではできないし、かなりの覚悟が必要な役だとも思いました。
──格闘技にそれほど魅了される理由は?
“儚さ”です。数分で勝敗が決まってしまうし、格闘家の現役人生は短いので。そんな中、格闘家のみなさんは一瞬を掴み取ろうと覚悟を決めて挑戦し続けている。そんな“儚さ”にとても惹かれますし、下手をしたら死んでしまうかもしれない勝負でも突き進む、その心のあり方も男としては燃えるんです。格闘技は芝居にも似ています。
──というと?
対戦するときに相手を煽るのも駆け引きのひとつ。「そっちがそう来るなら、こっちはこれだ!」というような、心理戦も格闘技には含まれています。お互いに技を出し合って、スキルのすべてを使って必死になって闘います。
芝居も、準備を整えて自分ができる力のすべてを投入して、芝居で相手とぶつかり合う。その姿にお客さんも心が動かされる……。そういうところが似ていると感じています。