おもな任務はスパイ活動
別班は、中国やヨーロッパなどにダミーの民間会社をつくって別班員を民間人として派遣し、ヒューミントをさせている。有り体に言えば、スパイ活動だ。
日本国内でも、在日朝鮮人を買収して抱き込み、北朝鮮に入国させて情報を送らせるいっぽう、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)にも情報提供者をつくり、内部で工作活動をさせているという。
また、米軍の情報部隊や米中央情報局(CIA)とは、頻繁に情報交換するなど緊密な関係を築き、自ら収集、交換して得た情報は、陸上自衛隊のトップの陸上幕僚長と、防衛省の情報本部長(情報収集・分析分野の責任者)に上げている。
ではいったい、どのような人物が別班の仕事に従事しているのかというと―陸上自衛隊の調査部(現・指揮通信システム・情報部)や調査隊(現・情報保全隊)、中央地理隊(現・中央情報隊地理情報隊)、中央資料隊(現・中央情報隊基礎情報隊)など情報部門の関係者の中で、突然、連絡が取れなくなる者がいる―それが別班員だというのだ。
いくら自衛隊の情報部門の人間でも、普通は人事システムの端末をたたけば所属先ぐらい簡単にわかる。しかし、端末を叩いても何もわからない者がいる、との話だった(それでも、〝同期〟などごく近い人たちは感づくと思うが……)。
「はじめに」でも紹介したように、別班員になると、一切の公的な場には行かないように指示される。表の部分からすべて身を引く事が強制されるわけだ。
さらには「年賀状を出すな」「防衛大学校の同期会に行くな」「自宅に表札を出すな」「通勤ルートは毎日変えろ」などと細かく指示される。
ただし、活動資金は豊富だ。陸上幕僚監部の運用支援・情報部長の指揮下の部隊だが、一切の支出には決裁が不必要。「領収書を要求されたことはない」という。
情報提供料名目で1回300万円までは自由に使え、資金が不足した場合は、情報本部から提供してもらう。「カネが余ったら、自分たちで飲み食いもした。天国だった」という。
シビリアンコントロールとは無縁な存在ともいえる「別班」のメンバーは、前述の通り、全員が陸上自衛隊小平学校の心理戦防護課程の修了者。
同課程の同期生は、数人から十数人おり、その首席修了者だけが別班員になれるということを聞いて、すとんと胸に落ちるものがあった(後から、首席でも一定の基準に達していないと採用されないとも聞いた)。
同課程こそ、旧陸軍中野学校の流れをくむ、〝スパイ養成所〟だからである。
文/石井暁 写真/shutterstock
#2『『VIVANT』でもまだ謎の多い“別班”はなぜ非公然組織になったのか。元所属者による暴露本の衝撃的内容…しかし「過去も現在も存在しない」と防衛省(防衛庁)は主張』はこちらから
#3『『VIVANT』乃木も受けたのか? “別班員”になるための試験を元隊員だった自衛隊幹部が明らかに…「トイレのタイルの色は?」「X国はどこにある?」1人につき1時間以上の質問攻め』はこちらから












