テレグラムによる実行犯への指示
ルフィやキムを名乗る首謀者による広域連続強盗事件で有名になったのがテレグラムです。これは、送信者が設定した一定時間が経過すると、メッセージが消失して証拠が残らないことから、犯罪を行なう際の通信手段として、重宝されています。
ちなみに、テレグラムやシグナルのアカウントは、SIMカードがないと作れません。しかし、そこは悪いことをする人たちも心得たもので、秋葉原に行けば海外の旅行者向けにSIMが売っているから、それを悪用するとのこと(5Gで5000円など)。「旅行者に1枚あたり1000円の手数料を付けて(来日旅行者に)買ってもらう。10枚買ったら1万円です。旅行者にはいいアルバイトになります。プリペイドSIMには電話番号が付いていませんが、これは、電話番号付きなので便利です」と、元半グレの幹部に聞きました。
首都圏で活動する指定暴力団の幹部が、「FRIDAY」の取材に対して、次のように答えています。
「テレグラムはスマートフォン(スマホ)にアプリをダウンロードすることで簡単に利用を始められる。利用者同士のお互いの通信内容が暗号化されるほか、『1日』『5時間』などと消去時間を設定することでメッセージが自動的に削除されることが可能となっている。このため、振り込め詐欺などの特殊詐欺グループや覚醒剤などの違法薬物の売買など行っている犯罪組織で使われることが多く、捜査の障壁となっている」(「FRIDAYデジタル」2023年2月25日)。
この幹部の言によると、テレグラムはもともと特殊詐欺や覚せい剤の売人などが、足が付かないために用いていたツールだといいます。
「特殊詐欺やシャブ(覚醒剤)の密売などを行っている者たちが、かなり以前からテレグラムを使っていたことは良く知られていた。ヤクザだからといって密売グループなどのように、自分たちも日常的に、毎日のように違法なことを行っている訳ではないが、警察への対策でテレグラムを使っている。通常の音声通話やメール、LINEなどを使っていれば、やろうと思えば警察はすべての通信内容を把握することができるはずだ。だから重要なシノギ(資金獲得活動)の話では当然だし、その他の日常的な連絡事項でもテレグラムを使う。もちろん文字のメッセージは時間設定して自動的に消去している」(同前)
暴力団では、警察の通信傍受を警戒して、テレグラムでやり取りしているわけです。
「警察当局の捜査幹部は、『消去されたパソコンのデータやスマホの通信履歴などは、デジタル・フォレンジック(電子鑑識)という技術で通信内容を復元し、これまでさまざまな事件捜査に役立ててきたが、テレグラムの場合は非常に難しい』と話す。ただ、テレグラムのメッセージは未読の状態にしておくとそのまま履歴や痕跡が残る仕組みになっている。前出の捜査幹部は、『全国各地で発生してきた強盗事件で、これまで数十人に上るかなりな人数の実行犯を逮捕している。スマホの指示内容を既読にする前に実行犯を逮捕した場合には押さえたスマホにメッセージが残っている』という」(同前)。