法務の仕事もAIが代替する

「自分の仕事はクリエイティブ系ではないから安心だ」と思っている人もいるかもしれません。

しかし、言葉や文書を多く使うホワイトカラーの業種である限り、誰もが無関係ではいられません。生成AIの進化は、すべてのホワイトカラーが着目すべきだと言えるでしょう。

わかりやすい例を挙げるのであれば、弁護士、税理士、会計士、社会保険労務士などの士業です。

これらの職種はいずれも、文書やルールがベースにある職業です。それならば、各分野のデータを生成AIにインプットして、さらに業界特有の言い回しなどを覚えさせてしまえば、生成AIが人間に代わってアウトプットをしてくれます。

AIは、時間が経つと「あれ、なんだっけ?」と記憶が薄れる可能性がある人間とは違って、一度学習した情報は消さない限り残ります。業務補助の事務員を雇うよりも、AIのほうが人件費を抑えられることも多くなるでしょう。

すでに法務分野ではAI活用が進んでいます。

”AIクリエイター”の増殖がもたらすアーティストへの圧迫…人間かAIか区別がつかず、米SF小説誌が新人賞の募集を打ち切りにも_2

今よりも必要とされる人員が少なくなる展開

2017年に日本の大手法律事務所出身の弁護士2人によって設立された「LegalOn Technologies(リーガルオンテクノロジーズ)」というスタートアップがあります。

同社は法務の知見と自然言語処理技術、機械学習をテクノロジーで融合させることによって、企業法務の効率化を目指すソフトウェアの開発・提供をする企業として、急成長を遂げています。

2023年に入ってからは、ChatGPTを活用して契約書の修正をサポートする条文修正アシスト機能を新たに搭載し、AIによる契約審査業務などの効率化サポートをさらに強化しています。

2022年12月時点の推定時価総額は約900億円。海外の黒船が市場を制覇する前に、海外進出にも積極的に挑戦しています。

日本は良くも悪くも文書大国ですから、文書の正しさには常にチェックが入ります。法務業界のような正確性が求められる領域ではなおさらでしょう。

そうした分野の職種が、AIに代替されるとまではいかなくとも、今よりも必要とされる人員が少なくなる展開は十分に考えられます。

専門知識や技能を必要とされない事務という業務は、もしかすると10年後には別の業態になっているかもしれません。少なくとも、人件費がボトルネックになっている産業では、どんどん変わっていくでしょう。