知的生産性の高い職でも生成AIへの代替が進む
すでに淘汰が始まっている業種もあります。
生成AIと直接には関係ありませんが、コンビニやスーパーマーケットで増えた無人レジ、ファミリーレストランで見かけるようになった配膳ロボットを思い浮かべてみてください。
今は物珍しさという一面もありますが、もしこの無人化やロボット化が社会に受け入れられると、今後はあらゆる店舗の店員は必要最低限の人数に抑えられていき、人間のスタッフはより高度なことを任される方向にシフトしていきます。その波のなかで、効率化を考える店舗では、レジ打ちの募集は、これから減少していくでしょう。
店員の業務内容も、これまでメインだった接客対応から機械の管理、メンテナンスにより重心が移っていく可能性もあります。
塗装や組み立てなど、工場で行なわれるような作業が、人間から自動で決まった作業をするロボットに置き換えられていった歴史を振り返れば、これは自然な流れです。
AIにすぐかわってしまう労働集約型の職種
安価な飲食チェーン店では厨房の作業から接客まですべてをAIが組み込まれたシステムやロボットが対応するようになる一方で、人間の店員がホスピタリティをもって対応してくれるのは高級店だけ、という形の差別化されたサービスが到来する未来もあり得ます。
かつては企業の顔とも言われた受付嬢のような存在も、この先は消えていく可能性が高いでしょう。最近では受付業務をタブレットに置き換える企業が増加し、訪問者が担当者を直接呼び出せるシステムを採用している企業のほうがもう多いかもしれません。
また、実現はまだ不確実性が高いままですが、すべての車がAIによる自動運転に置き換われば、タクシーやバスの運転手も不要になるでしょう。人間のドライバーが運転する車と、AIが搭載された自動運転車が入り乱れて道路を走る過渡期を経て、いずれは自動運転車が主な世界になる可能性があります。船舶についても同様でしょう。
ここまで紹介した職種はいずれも労働集約型と言われるものでしたが、知的生産性が高い職種であっても淘汰される可能性はあります。
音声翻訳の精度がどんどん上がってきていることを考えると、国際会議の同時通訳といった仕事は、今後不要になっていくかもしれません。
どれだけ専門知識と豊富な経験があっても、人間の翻訳者よりもAI翻訳のほうが、コストが10分の1に抑えられるのであれば、「それならばAIを選ぶ」という人や会議の運営者は少なくないはずです。
文/山本康正 写真/shutterstock
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