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「画像生成AI」が描いた絵画が…コンテストで優勝

トランスフォーマーの登場によって飛躍的な進歩を遂げたのは、対話型AIだけではありません。2022年以降、作成したい画像のイメージをテキストで指示すると自動で画像を生成する「画像生成AI」も急速に進化を遂げています。

オープンAIも2021年に「DALL・E(ダリ)」という画像生成AIを発表しており、翌年4月には「DALL・E 2」を発表していますが、ブームに火が点いたのは、2022年6月にリリースされた「Midjourney(ミッドジャーニー)」による部分も大きいでしょう。

元NASAの技術者であるデビッド・ホルツが代表を務めるアメリカのスタートアップMidjourneyが開発したこのサービスでは、例えば「ゴッホの画風で東京タワーを描いて」と指示すれば、ゴッホの画風、具体的には色彩や構図、画材などの特徴を大量に学習したAIが、わずか数十秒ほどで完成度の高い「ゴッホ風の東京タワーの絵」を作り出してくれるのです(よりイメージに近い画像を生成させるには指示の仕方〈プロンプト〉を工夫する必要があります)。

同年8月に米コロラド州で開催されたアートコンテストでは、このMidjourneyを使って制作された作品が最優秀賞を受賞。受賞後に制作者が「画像生成AIで作った作品だ」と明かしたことで、「これは芸術の死だ」と報道されるほどの騒動となり、アートの価値や真贋をめぐってさまざまな議論が巻き起こりました。

「これは芸術の死だ」AI画像生成がアートコンテストで優勝してしまった…もう法整備を持てない、この流れは誰にもとめられないのか_1
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イギリス発の画像生成AI「Stable Diffusion」のすごさ

ここまでご紹介してきた生成AIはアメリカの企業によるものが主でした。しかし、画像生成AIの分野でMidjourneyの次に注目を集めたのは、イギリスのスタートアップStability AIがドイツのミュンヘン大学のグループなどと共同で開発し、公開した「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」でした。

Midjourneyが発表されたわずか2ヵ月後に公開されたStable Diffusionの着目すべきところは、オープンソースであり、かつ、商業利用にも制限を設けなかった点です。

つまり、膨大なデータを学習済みのソースコードを公開し、無料かつ無制限で「ご自由にお使いください」とオープンにしたのです。ゲリラ商法的な手法とはいえ、これによって画像生成AIの世界が活発化し、一気に市場が開けました。

「AIの学習に無断で画像を使用することは著作権の侵害だ」という意見も出ており、実際、2023年に入ってから大手フォトストックサービスのゲッティ・イメージズが、「Stable Diffusionで行なわれていることは知的財産の侵害である」と主張し、提訴している最中です。