のんびり法整備を待っていられない

とはいえ、オープンソース化してさまざまな人に広く利用してもらい、次のビジネスチャンスを探していくというスタイルは、AI開発において、この先も続いていくものと予想されます。

音楽業界も、ナップスターなどで無料で音楽ファイルを共有するような混乱を経て、今のアップルミュージックなどの定額制音楽ストリーミングサービスに落ち着いているように、新しい手法が出てきたときに一時は混乱し、妥当な手法に落ち着いていくのはよくあることです。

近年のAI開発はスピード勝負の世界です。オープンソース化してビジネスチャンスにつながれば儲けもの。訴えられたら訴えられたで対応をしていく、という考え方が基本にはあるのでしょう。

画像生成AIは、その性質上、とりわけ著作権や倫理面の課題が多いことは確かですが、メリットとリスクを天秤にかけた上で、オープンソース化という判断に至っているものと思われます。

AI開発の最先端を行くアメリカにおいても、いまだ法整備の途上であることを考えると、生き残りがかかっている企業側としては、のんびり法整備を待っていられないというのが本音なのでしょう。

「これは芸術の死だ」AI画像生成がアートコンテストで優勝してしまった…もう法整備を持てない、この流れは誰にもとめられないのか_2

画像編集ソフトのアドビも画像生成AIに進出

既存企業も動き始めています。

画像編集ソフト「Adobe Photoshop」などを展開するアドビは、2023年3月から、画像生成AI「Adobe Firefly(アドビ・ファイアフライ)」の試験運用をスタートさせました。

Adobe Fireflyのアピールポイントは、合法に権利処理された画像コンテンツのみを利用できるように整備されている点です。著作権問題をあらかじめクリアにしておき、かつ、どのようなAIモデルで生成されたかも確認できる仕様にしているため、企業が安心して商用利用できるコンテンツ制作に貢献できるのが他の画像生成AIとの決定的な違いです。

MidjourneyやStable Diffusionが「新しい遊び道具」として盛り上がったことと比べると、クリエイターのユーザーを多数抱えているアドビのスタンスは、最初からグレーな部分の懸念を取り除くことで、ビジネス利用に特化していると言えます。