ハードウェアにおいてもソフトウェアの付加価値の割合が増大している
ビッグテック、日本で言うGAFAMのなかでは、今のところアップルは生成AIについての目立った動きを見せていません。
これは、アップルはiPhoneというハードウェアの売上を中心にしているからだと思われます。しかし、ハードウェアにおいてもソフトウェアの付加価値の割合が増大しているなかで、この流れに影響されないわけにはいかないでしょう。
GAFAM以外では、CRM(顧客関係管理)ツール大手のセールスフォースが世界初となるCRMのための生成AIテクノロジー「Einstein GPT」を、ZoomがオープンAIと提携して追加した新機能「Zoom IQ」を、それぞれ2023年3月に発表しています。
このように世界的な大企業が続々と生成AI市場に乗り出しており、事例は枚挙に暇がありません。これらの発表が2023年に入ってから立て続けにされていることを考えると、生成AIのムーブメントがどれだけ大きなことなのかが実感できるでしょう。
生成AIを活用した新機能をいかに早く実装できるか。それが自分たちのビジネスの命運を分けることを、最前線の経営者たちはすでに理解しているのです。
政府の見解と異なる文章や画像が生成されることに危機感を覚える中国政府
アジアに目を向けると、やはり中国の動きが目立ちます。
まず、中国の検索最大手・百度(バイドゥ)が、2023年3月に対話型AI「ERNIE Bot(文心一言)」を発表。アリババも同年4月に「通義千問」という対話型AIを発表しました。他にもいくつもの企業が独自開発した対話型AIや大規模言語モデルを発表したり、発表を予定したりしています。
政府の見解と異なる文章や画像が生成されることに危機感を覚える中国政府は、当局による事前審査の義務付けなど、規制の方向に動き出していますが、世界的な潮流のなかで、どこで落とし所を見つけるか、手探りで進めているのが正直なところでしょう。
文/山本康正 写真/shutterstock
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