「甘え」と「甘やかし」は違う
「甘やかし型」に偏った親の多くは、「甘え」と「甘やかし」の区別がついていません。
「甘え」は子どもの愛着形成に必要なものです。情緒の安定や正常な心理発達に欠かせません。
愛着については、精神科医のボウルビィが提唱した愛着理論(アタッチメント理論)が有名です。ごく簡単に言えば、子どもが保護者等の信頼できる人に「くっつく」ことで安心する行為のことです。赤ちゃんは、「お腹がすいた」「お尻が気持ち悪い」「眠い」「抱っこしてほしい」など、泣いて訴えますね。要求に保護者が応え、安心できるようにくっつくと、赤ちゃんは落ち着きます。
こうした行動が繰り返されて、愛着が形成されます。愛着はその後の発達に大きく影響することが知られており、近年は「たくさん抱っこしてあげてください」というのが主流です。一時期は「抱き癖がつくからよくない」という説もありましたが、発達心理学上の根拠はありません。
信頼できる人にくっつくことで安心できるのは、乳幼児に限ったことではありません。大きくなってからも、不安なときにはハグしてあげるなど甘えさせることで気持ちが落ち着き、不安を乗り越えるパワーが湧いてくるものです。
子どもの「甘え」を受け入れることは、自立のために重要なのです。
一方、「甘やかし」は親の都合で行われるものです。子どもの「甘え」にもとづいておらず、親自身の満足のためにやっています。
たとえば、子どもがスナック菓子や甘いお菓子を食べたいと言っても、健康のことを考えてある程度制限するのが普通ですが、子どもが喜ぶからと際限なく与えるのは「甘やかし」です。ほしいと言われたものを与えれば、その場は丸くおさまるしストレスがかかりません。だから甘やかすのはラクなのです。
最近多く見られるのは、ゲーム機の早期購入です。小学校に入る前から長い時間をTVゲーム、ネットゲームに費やしている子が増えています。生活のリズムを整えることが大事な時期ですから、本来なら時間を制限し、寝る前にはゲームをやらせない、就寝時間を守るなどしなければなりません。
ところが、子どものやりたいようにやらせるほうがストレスがかからないので、制限を設けずにやらせてしまう。完全に「甘やかし」です。こうした生活を続けた結果、昼夜が逆転してしまい、学校に行けなくなった子を少年鑑別所で多く見ました。
文/出口保行 写真/shutterstock
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