大事に育てたい…おもちゃをふんだんに買い与えた両親
[本記事で紹介する事例における罪状]
覚せい剤取締法違反
自宅で覚せい剤を複数回使用し、家を飛び出して走り回るなどの奇行により通報、検挙された
両親にとって、ヒロカズは長く待ち望んでやっと授かった子であった。父母ともに20代半ばで結婚したものの、なかなか子宝に恵まれず、とくに母親はずいぶん悩んだようだ。ふたりとも子どもがほしいと願っており、「またダメだった」と言うのが辛かった。
結婚して15年が経ち、ほぼ諦めていた頃に奇跡のように授かったのがヒロカズだった。母親は嬉しくて嬉しくて、大事に育てようと心に誓った。ヒロカズを産むときに38歳になっていたこともあり、第2子は望まなかった。
両親にとって、ヒロカズがすべて。「子ども中心」の生活が始まった。
ヒロカズにもしものことがあれば、せっかく手に入れた夢の生活が壊れてしまう。そんな想いがあって、両親ともに子どもを心配してばかりいた。外遊びでアクシデントがあっては大変だと、室内用ブランコやジャングルジムを購入。家の中で、目の届く範囲内で遊んでくれれば安心だ。おもちゃもふんだんに買い与えた。幸い、経済的にも余裕があった。
ヒロカズがとあるテーマパークに興味を示すと、当たり前のように年間パスポートを買う。毎日でも連れて行けるよう、近くに引っ越しまでした。
小さい頃から幼児教室に通い、幼稚園受験をしたのも、将来ヒロカズが苦労しないようにと思ってのことだ。大学までエスカレーター式に進学できるところを選んで受験し、なんとか合格することができた。
ヒロカズはこれといって打ち込めるものがない
そして母親は、幼児教室、幼稚園の送迎はもちろん、小学校に入っても卒業するまで送迎を続けた。小学校にお迎えに行き、場合によってはそのままテーマパークに連れて行くことも多かった。
両親は、とにかく何でも手伝ってあげるというスタンス。だから、ヒロカズは食事の後、食器を下げることすらしない子に育った。家の中ではそれでまったく問題ないのだ。ヒロカズ自身、何も問題だと思っていないし、不満もない。そうやって過ごしてきた。
ヒロカズにとって両親は、ほしいと言えば何でも買ってくれるし、何かやりたいと言えばやらせてくれる人たちだ。といって、とくに感謝したこともない。小さい頃からそれが当たり前だからだ。逆に、「やってもらえない」ときには不満を持つようになっていた。
それに、ヒロカズはこれといって打ち込めるものがないのだ。どうしてもほしいと思うようなものもない。だから、適当にゲームを買ってもらっては、持て余している時間をつぶしていた。
高校のとき、ヒロカズは文化祭の実行委員になった。もちろん立候補したわけではない。委員会活動として役がまわってきてしまったのだ。
「面倒くさい仕事ばかり押しつけやがって」