理解を深め、誰もが生きやすい社会へ
日々子どもたちに接する教職員の理解を深めてもらうことが最も大切であることは、その通りだと思う。ただ、教職員の長時間労働は、社会問題化している。余裕がない教職員に、才能や困難を見いだすよう求めても、なおざりになるのがオチだろう。
有識者会議の座長を務めた岩永雅也・放送大学長(教育社会学)に21年11月、インタビューした。
岩永座長は「教員の負担を増やすようなことは考えていない」としたうえで、「現にいま、才能ゆえに困難を抱えている子どもがいる。学校や教員に知識がないことで、見過ごされ てしまっている子どもたちがいるのは事実。最前線の先生に、対応できる知識と技術を身 につけてもらうことは、才能のある子どもだけでなく、すべての子どもの幸せにつながることだと考えている」と話した。
教員だけではない。ギフテッドや特異な才能がありながら困難に直面している子どもたちに対する、社会全体の認知を広げ、理解を深めること。自分たちには関係がないと異端な存在として見るのではなく、身近にいるかもしれないと思うこと。特別視したり、過剰な 期待をかけたりするのではなく、特異な才能も、一つの個性だととらえて見守るような社 会になれば、結果的には誰もが生きやすい社会になるのではないか。私はそう考えている。
文/伊藤和行
写真/photoAC・朝日新聞社・ご家族提供
#1 3歳で機械式時計の仕組みを熟読、小4で英検準一級… IQ154の少年
#2 「それってギフテッドじゃん」自身の高IQを知人に打ち明けて聞いた初めての言葉
#3 顕微鏡のように見える目 5度しかない視野から見た世界
#4 選別することが「差別」につながりかねない事実