僕より妻のファンのほうが多いんじゃないですかね

――普通の若い男女なら「夢ばっかり追ってないで、ちゃんと働いてほしい」と言われかねないシチュエーションだと思います。

20代は本当にピンポン玉みたいで、大学卒業後に入社したリクルート社は1日で辞め、その後はアルバイトをしながら2つの演劇研究所に通ったもののダメで、もう1度就職して広告会社の正社員として働いていました。

妻と出会ったのはちょうど2つ目の研究所時代でしたが、正社員として働きながらいまもやっている演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げして、もう1回バイト生活に戻ったんです。せっかく正社員として働いていたのに、ですよ。でも、妻は何も言わなかったですね。

――奥さんが佐藤さんの才能をいちばん信じていたんでしょうね。

1度、テレビのトーク番組に出たときに、人生を振り返るみたいな企画があってサプライズで妻がインタビューに応えていたことがあったんです。うちの妻は顔出しNGなので、文字だけでしたが。そしたら、番組のスタッフが当時のことを妻に聞くわけです。

「なぜ何も言わなかったんですか?」って。

僕も「彼の才能を信じてた」とかよさげなこと言うのかなと思っていましたが、「当時はお互いに若かったので、何も考えていませんでした。悔いの残らないようにやればくらいで」ってのんきに話していました。でも、それは建前で本音では信じてたっていう風に僕は解釈しています。妻は口を割らないでしょうけどね(笑)。

「君の顔、便器に似てるね」「何を着ても作業服」…俳優・佐藤二朗の妻の残酷名言集。「Twitterやコラムを見てくださっている方には、僕より妻のファンのほうが多いんじゃないですかね」_3

――「君の顔、便器に似てるね」「何を着ても作業服」「年末年始を狙った空き巣にしか見えない」とは、すべて奥様が佐藤さんの見た目の印象について放った一言です。著書では、奥様の数々の“名言”が「妻の残酷名言集」としても紹介されていますが、ツイッターでも度々話題になる奥様はどんな方なのですか?

僕が面白おかしく誇張してしまっているだけで、そんなに厳しくはないですよ。まあ、群馬のかかあ天下とからっ風で気は強いですが……。いまNHKの『歴史探偵』という番組を大阪で収録していまして、1度息子がユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に行きたいというので、ついでに妻と息子が収録の見学に来たことがありました。

そのときに番組で副所長をやっているNHKの渡邊佐和子アナが妻を見つけ、第一声は「あっ、ファンです!」でした(笑)。実際にカッコいい人ではあるんですが、Twitterやコラムを見てくださっている方のなかには、僕より妻のファンの方が多いんじゃないですかね。