人生まで変えるエンターテインメントの力
──映画『月の満ち欠け』は、自分の人生を少し愛せるようになったり、目の前の人をより大切にしたいと思えるような力がある作品だと思います。大泉さんは、エンターテインメントから影響を受けた経験は?
物を作る楽しさを教えられたのは、三谷幸喜さんかもしれないですね。大学時代に三谷さんの『ショー・マスト・ゴー・オン』という舞台を見て、演劇ってこんなに楽しいものかと思ったんです。そこから『12人の優しい日本人』という映画とかを見て「やっぱすごい」って思いましたね。
それまで僕にとってのおもしろさって、お笑い芸人さんのコントとか漫才しかなかったんです。でも映画や演劇にも、こんなにおもしろいものがあると教えてくれたのが三谷さんです。
僕はまさか、このお仕事をするようになるなんて思わなかった人間だけど、出会う作品によって人生が変わる方は確実にいますよね。映画を見て役者になろうと思った方もいるだろうし、映画の世界に入ろうと思った方も間違いなくいる。エンターテインメントの力って大きいと思います。
──大泉さんも、映画を撮ってみたいとか?
いつかは……という気持ちはありますね。だけど、どんだけ大変なんだろうって思うんです。役者はセリフを覚えて現場に行って撮影すれば家に帰れるけど、監督ってそれだけで終わらないじゃないですか。
脚本書いて、ロケハンして、役者がいないところでもやれ「実景だ」「物撮りだ」って撮影すると考えると、大変ですよ。
やっぱり娘がまだ僕と遊んでくれる間はできないんじゃないかな。なかなか“娘との時間”を“映画を撮りたい”という気持ちが超えてこない。もうパパと遊んでくれなくなったな、ということがわかった時点で、考えたいと思います(笑)。
──昨年出演したNetflixの映画『浅草キッド』は、劇団ひとりさんが監督されました。
職業監督じゃない劇団ひとりさんが、あそこまで素晴らしい映画を作りましたからね。結局、僕が撮ってもあの映画を越えられないんじゃないかっていう気がしちゃいました。やってみたい気持ちを削がれた部分はあります(笑)。
──とはいえ、もし撮るとしたらコメディでしょうか?
そうでしょうね。ただ、あまりにも突飛でバカバカしいものではなく、大人も楽しめるようなものにしたいですね。おもしろい脚本が書ければ、やっぱり自分も出たい。ただ、この重い腰をいつ上げるのか……。まだ娘が「パパ、パパ」と言って遊んでくれるので、ちょっとわかりませんね(笑)。