ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズなど「コメディの鬼才」といわれる福田雄一監督作品の常連であり、昨年はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に、主人公・北条義時(小栗旬)と対立する比企能員役で出演した佐藤二朗さん。北条対比企の最終局面が描かれた「比企能員の乱」のシーンの放送後は、SNS上で「ただの面白オジサンじゃないことがよくわかった」、「最後の最後まであがくところに凄みを感じた」とその演技が絶賛された。
テレビではドラマでのコミカルな役柄、バラエティでのユーモラスな人柄でお馴染みだが、近年は映画『はるヲうるひと』(21年)や『さがす』(22年)でコメディとは真逆なシリアスな役を演じ、強烈なインパクトを残している。いったい俳優・佐藤二朗とは、何者なのか?
正直、自分でもわからないんです
――ドラマやバラエティ番組での面白いオジサンというイメージがある一方で、映画『はるヲうるひと』や『さがす』の中にはまったく別人の“佐藤さん”がいます。どっちが本当の佐藤さんなのでしょう?
両方とも僕なんでしょうね。『さがす』は出演だけですが、脚本・監督も務めた『はるヲうるひと』に関しては「なんでパブリックイメージと真逆の作品を作るんですか?」って何度も聞かれましたが、正直、自分でもわからないんです。
ただ、僕が出演している『幼獣マメシバ』シリーズの信頼しているクリエイターであり、プロデューサーの永森裕二さんがどこかの取材で言っていたことに、なるほど、と思いました。
「佐藤二朗は面白いオジサンというイメージがある。それはその通り。酒席ではただのバカなおっさん(笑)。でも、書くとほの暗さが出てくる。つまり、彼の内在するもの、本来やりたいことは喋っても出てこない。書くと出てくる。それが面白い」
たしかに最初に監督した映画『memo』(08年)では強迫性障害を描いて、2作目の『はるヲうるひと』では女郎の話を書いたのですが、どちらも人間の内圧の話ですからね。まあ、故意にパブリックイメージと逆のものをやってやろうという思いが多少はありましたが、自分ではそんなに意識していないんです。