また、友人関係なども限定的になるだろう。幅広く浅い人間付き合いをする人が激減し、深く狭い人間関係へと移行する時代となるだろう。
犯罪捜査にも大いに役立つだろう。サイコダイブにより入手できる脳内情報が物的証拠や状況証拠以上の証拠となり、犯人逮捕に繫がる。冤罪も起こりえない世の中になるだろう。そして、警視庁の科学捜査研究所(科捜研)の科学捜査のやり方や組織のあり方まで変えてしまうかもしれない。
ほかにも認知障害、認知症、アルツハイマー病の患者に役立てられる可能性はないだろうか。これらの患者は、記憶を蓄積することができない。そのため、会話が成立しない傾向にある。そうした患者に過去の記憶をリアルタイムにうまくフィードバックさせることで、あたかも認知関連の病気を患っていないかのようにできるのではないかという期待も生まれる。
負の影響も伴う
一方でこのテクノロジーは、先述したように有用性は高いが、負の影響も大きいだろう。自分の内心、内面が裸になるようなものだからだ。
そのため、人は性悪説的な心理へと移行するかもしれない。もしかしたら、離婚なども増えるかもしれない。政治家はどのように記者会見や所信表明などをするのだろうか。
そのためのパーソナルセキュリティ、プライバシー保護のテクノロジーが開発されることも十分予想される。家の内部を見られないようにカーテンを閉めるようなテクノロジーだ。テクノロジーが進化すると、それとともに失う負の影響も伴うことを忘れてはならない。
脳情報へのアクセスを防御したり、脳情報を暗号化したり、そのようなセキュリティ技術も開発される必要があるだろう。そうでないと、人の心の中がすべて読み解かれて、心も身体もすべて丸裸にされたような形になってしまう。
企業の経営層にサイコダイブし、機密情報を盗めばインサイダー取引が可能になるし、経営ノウハウや営業秘密も漏洩してしまう。また、優秀な人材をヘッドハンティングしなくとも、サイコダイブによって能力を流用することだってできるかもしれない。このようなシーンを考えてみても、サイコダイブに関連するさまざまなビジネスが想像できるのではないだろうか。
文/齊田興哉 写真/shutterstock