ほかにも2013年にATR脳情報研究所の神谷之康氏らの研究チームが実施した、寝ている人が見ている夢を解読する研究もある。寝ている被験者が夢を見ていると思われるタイミングで起こし、どんな夢を見ていたのかをヒアリングする。そのときに、fMRIでスキャンしたデータと照らし合わせることで、60%ほどの的中率を得ることができたというのだ。

また、2019年にベルリン工科大学とチューリッヒ工科大学などの研究チームは、眼球の動きから人がどのようなことを思い出しているのかを推定できるシステムを検討している。人は写真などを脳で想像するときに、その写真を見ているかのように眼球が動くのだという。その眼球の動きを追うことでどのような画像を想像しているのかを推定できる機械学習アルゴリズムが可能だというのだ。

エスパーのように他人の心を読み、記憶や思考を盗む「読心術社会」が私たちに訪れてもまったく不思議ではない根拠_3

実際に美術館で20枚ほどの絵画を見てもらい、その後、何も書かれていないホワイトボードを見ながら、絵画を思い出してもらう実験を行ったところ、被験者の眼球の動きから高い精度でその絵画をシステムが検索することができたという実験結果もあるのだ。

最近では、2022年に大阪大学で人が想像する画像をディスプレイに表示させるテクノロジーの開発に成功している。これは、被験者が見た画像を頭蓋内脳波から推定する「脳情報解読技術」というテクノロジーを利用している。ちなみに、頭蓋内脳波とは、脳の表面もしくは深部に設置した電極(頭蓋内電極)で計測した脳波のことだ。

SF映画のような形にまでは到達していないが、それに近い形での研究が着々と進んでいる。人の想像していることや考えていること、記憶にアクセスし、それを読み取り、可視化するテクノロジーというものは実際にあるのだ。

社会が疑心暗鬼に陥る!?

相手の心理や記憶を読み取れるテクノロジーが普及すれば、恋愛においてもビジネスにおいても、無駄のない効率的な行動を取ることができそうだ。相手に好意がないとわかったら、早く次の恋愛に移れるし、ビジネスでも商談がまとまらなそうであれば、何度も企業へ往訪し折衝する無意味な機会も減る。