これはアプリとして展開されているため、パソコンやスマートフォン上でのリモート会議でも活用することができる。しかも、リアルタイムで把握できるというのがすごい。マイクをオフにして発言していない参加者の表情から感情を分析することもでき、会議全体の雰囲気も分析できるのだ。
ペットを対象としたテクノロジーもある。メルボルン大学は、犬や猫の感情をAIで分析するテクノロジーを有し、「Happy Pets」というアプリを公開している。使い方は、スマートフォンでペットの表情を撮影するだけ。ペットの画像をAIが分析し、幸せ、怒り、中立、悲しみ、恐怖の5つのパターンをパーセンテージで表示するのだ。
このように人や動物の表情から本心を読み解ける世界はすでに実現している。ただし、現時点では課題も残っている。それは、リアルタイムかつ対面のシーンに対応していないことだ。おそらく未来は、対応できるようなるだろう。その場合は、6月23日配信記事「メガネ型のスマホを待ちわびる人に知ってほしい「スマートグラス」という夢のデバイスが持つ計り知れない威力」で言及したスマートグラスが必要不可欠だろう。スマートグラスに取り付けられる小型のカメラで相手の表情を読み取り、本心をクラウド上のAIが分析し、結果をレンズに表示するという仕組みが考えられる。
他人の「夢」は読み取れる
人の心理を読むテクノロジーはこれだけではない。「サイコダイブ」という言葉を聞いたことはあるだろうか。
サイコダイブとは、人の精神(サイコ)へと入り込む(ダイブする)こと。もう少し平たくいえば、人の脳へと入り込み、その人の記憶や考えていることを盗み出すことだ。もしかしたらサイコダイブは、テレパシーと類似点や共通点があるので包含関係にあるといえるかもしれない。
サイコダイブを描いた代表作といえば、夢を見ながら眠っている人の潜在意識の中まで入り込んで、アイデアなどを盗むことが描かれているSF映画『インセプション』が有名だろう。世界ではすでに『インセプション』で描かれたサイコダイブに近い研究が行われている。
サイコダイブの研究は「脳情報デコーディング」とも呼ぶ。2001年あたりには、fMRI(磁気共鳴機能画像法)というMRI装置を使った脳のどの部分が機能しているかを知ることができる方法で、脳情報デコーディングを研究している例が多かったようだ。ある画像を人が見ているときの脳の状態をfMRIでスキャンしたデータをデータベース化する。そのデータベース化されたデータを使えば、人が見ている画像を推定することができるというものだ。